こんな方におすすめ
- 防災対策に力をいれたいマンション管理組合の関係者
- マンションにはどのような防災設備があるか知りたい方
1 マンションの防災設備は何がある?
マンションの防災設備に何があるかを理解する前に、まず「防災」と「防火」を混同される方が多いので整理をする必要があります。
「防災」には広い意味で「防火」が含まれていますが、「防火」はあくまでも「火」に関することであり、台風やゲリラ豪雨といった災害の観点は含んでいません。
マンション内で防災対策の検討を進めるうえでは、このことを理解しておかなければなりません。
また、マンションの設備は大きく「消防法」と「建築基準法」の観点から定期的な点検が義務付けられています。
消防法の設備
- 消火設備:火を消す設備
- 警報設備:火災を知らせる設備
- 避難設備:逃げるための設備
- 消火活動用設備:消火活動を円滑に行うための設備
建築基準法の設備
- 防火設備:火災被害の拡大を防ぐ設備
2 マンションの防災設備の種類と役割
それぞれの設備の代表的なものを紹介します
2-1 消火設備
①消火器
これは説明不要ですね。置かれている場所を把握しておきましょう。
②屋内消火栓設備
ホースを使用して消火活動ができる設備です。一人で使用できるものと二人で使用するものがあります。
③スプリンクラー設備
炎によってヘッドが溶けることにより消火剤が散布されるものです。誤って部屋で作動すると後処理が大変です。
④ハロゲン消火設備
機械式駐車場などに設置されています。ごくまれに誤作動により泡まみれとなっている様子がニュースなどでも取り上げられます。
2-2 警報設備
①自動火災報知設備
火災で発生した熱や煙を感知して発報することによって火災を知らせる設備です。
ときおり誤作動で迷惑することがありますが、鳴ったら必ず逃げる準備をしてください。
②非常警報設備
非常ベルや放送設備です。
この10年ほどで建設されたマンションであれば、管理事務所から各戸のインターホンを通して放送ができることが一般的です。
2-3 避難設備
①避難はしご
バルコニーに避難はしごが設置されているとイメージしやすいです。上階のバルコニーから下階のバルコニーに逃げるための簡易なはしごです。
②誘導灯および誘導標識
避難経路を示している標識です。よく非常灯(停電時に点灯する照明)と混同されますが別物です。
2-4 消火活動用設備
①排煙設備
火災では炎より煙が危険とまで言われます。この煙を逃がすための排煙窓などです。
②連結送水管設備
「送水口」と「放水口」があり、消防車で「送水口」から水を送り、「放水口」から散水する流れで消火活動を円滑に行います。
③非常コンセント設備
火災で使えなくなった電気配線に代わり、電気が使用できる設備です。
2-5 防火設備
①防火扉・防火シャッター
火災の際に警報設備と連動して自動的に扉が閉鎖され延焼を防ぎます。
3 知らないと損をするプラスαのマンションの防災設備
現在住んでいるマンションに無いからといって知らないと損をするかもしれない防災設備が、大型高層やグレードが高いマンションにはあります。
いずれも後付けはできない、設置が難しいものとなっています。
手厚い防災設備
- 災害用井戸
- 非常用発電機
- 非常用エレベーター
- 免震、制震構造
- フレキシブル配管、可とう性のある接手
- 屋上のホバリングスペースもしくはヘリポート
3-1 災害用井戸
災害対策で重要な水を確保するための設備で、マンションの敷地内に井戸があります。
有事の際には、マンション用というわけではなく、行政とも連携して近隣に開放することを前提に設置されている場合もあります。
3-2 非常用発電機
エレベーターや給水ポンプに繋がっていて、一定時間は停電になっても電気が共有されます。
この設備があればマンション全体で電気が使えると思っている方がいますが、共用部のライフラインに関わる部分にしか電気を供給しません。
3-3 非常用エレベーター
一定の高さのマンションに設置が義務付けられています。
非常用といっても実際には消防活動のために使用するエレベーターです。
他のエレベーターと比べて広いエレベーターを見たことがあれば、このエレベーターだと思います。
3-4 免振、制震構造
免震構造は建物と地盤の間に積層ゴムなどの緩衝材を設置して建物に伝わる揺れを軽減します。
制震構造は建物に伝わった揺れを吸収する構造です。いずれも高層マンションで多く採用されています。
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3-5 フレキシブル配管、可とう性のある継手
地震のときに給排水管が破断することを防ぐために、柔軟性のある配管や継手を使用しています。
専有部分のみの対策であればリフォームの際に実施が可能です。
3-6 屋上のホバリングスペースもしくはヘリポート
屋上に「H」と記載されたスペースをヘリポートと勘違いする人がいますが、正確にはホバリングスペースといってヘリコプターは着陸できません。
「R」と記載されている場合、レスキューに使用でき、こちらはヘリコプターが降り立つことができますが、多くの場合はホバリングスペースです。
4 後からでも可能!知らないと損をする防災設備とグッズ
費用や構造の面で後から設置することができない設備がありますが、一方で後からでも設置が可能なため、知らないと損をするかもしれない防災設備(グッズ含む)があります。
これらはぜひとも導入されることをおすすめします。
後付け可能防災設備
- 受水槽の取水栓
- AED
- 防災ベンチ
- マンホールトイレ
- 小型非常用発電機
- 災害救援(ベンダー)自販機
- エレベーター内の防災備品
4-1 受水槽の取水栓
各戸に水を給水するための受水槽ですが、災害時に停電や配管の破断で給水ができなくなる可能性があります。
受水槽に貯まっている水は利用価値がありますので、受水槽から直接水を取り出すことができる取水栓を後付けで設置しておきます。
4-2 AED
新築マンションでは標準設備になりつつあります。
ほとんどのマンションではエントランスに設置します。
4-3 防災ベンチ
普段はベンチとして使用できます。
かまどになるタイプのものや、防災備品を保管しておくことができます。
4-4 マンホールトイレ
下水道にあるマンホールの上に便座を設置してトイレの機能を確保するものです。
4-5 小型非常用発電機
エレベーターなどを動かすものでなく、照明やスマホの準電のために利用できる小型タイプのものです。
4-6 災害救援(ベンダー)自販機
普段は通常の自販機です。
災害のときには人が捜査して自販機内の飲料水を取り出すことができ、貴重な飲み水の確保に役立ちます。
4-7 エレベーター内の防災備品
普段はイスとして使用することができます。
中には非常用トイレや水が保管されており、防災用品の保管庫の役割を持っています。
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まとめ マンションの防災設備って何がある?知らないと損をする設備を紹介
本記事のまとめ
- マンションの防災設備は何がある?
- マンションの防災設備の種類と役割
- 知らないと損をするプラスαのマンションの防災設備
- 後からでも可能!知らないと損をする防災設備とグッズ
マンションの建設時から導入されていないと設置できない設備もあれば、後から設置できるものもあります。
後から設置できる設備はできるだけ設置して、特に災害グッズについては何かあったときのためのものですぐに手配できるものも多いです。
ここで費用がもったいないという考えは捨ててすぐに準備されることをおすすめします。
本記事が皆様の防災知識の向上や災害への備えに役立てば幸いです。
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