これまで起きた地震を教訓にマンションを購入する時や管理組合運営の場で、耐震基準に関する意識が高まっています。
ただ、マンションが新耐震基準に該当するのかをどのように確認すればいいのかわからない方は多いのではないのでしょうか?
実は新耐震基準に該当するかどうかは、ある程度簡単な見分け方があります。
本記事では耐震基準の調べ方だけでなく、耐震性の意味もあわせて紹介します。
こんな方におすすめ
- 耐震基準の確認方法を知りたい方
- いつから新耐震基準が適用されているか知りたい方
- 新旧耐震基準の違いを知りたい方
1 マンションの耐震基準の重要性
阪神大震災、東日本大地震、熊本地震、大阪北部地震等、この30年を振り返えると日本では大きな地震が起こっています。
このような地震が多い日本だからこそ、建築基準法はマンションを地震から守るための法律という側面を有しています。
そしてこの法律に基づき、一定の耐震基準を満たしていることから、これだけ地震の多い日本でも、マンションは安心して住むことができる住宅として人気があります。
マンション選びで重要な新耐震基準
特に耐震基準においては、新耐震基準か旧耐震基準かターニングポイントとなっていて、マンションの購入を考える人にとっては、旧耐震基準のマンションは最初から検討対象とならないほどのインパクトを持っています。
2 マンションはいつから「新耐震基準」に変わったのか?
マンションを購入するうえで、耐震性に関して知っておくべきこととして、「新耐震基準」と「旧耐震基準」があります。
旧耐震基準と新耐震基準
☑「旧耐震基準」:震度5程度の地震に関しては倒壊または崩壊しない耐震性を有する。
☑「新耐震基準」:震度6~7の大規模の地震動を受けても倒壊または崩壊しない耐震性を有する。※震度6~7(大規模の地震動)とは、阪神淡路大震災クラスの地震を指す。
この「新耐震基準」は1978年の宮城県沖地震をきっかけとし、1981年の建築基準法施工令の改正により、1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認において適用されることとなりました。
つまり、この法改正をきっかけに、マンションにはより強い耐震性が求められるようになったということです。
実際に、2016年に発生した熊本地震において、1981年以降の新耐震基準で建設されたマンションでは、地震による直接的な建物の被害は少ない状況だったと国土交通省が発表しています。
3 1981年6月から新耐震基準が適用された!確認すべき建築確認の日付の調べ方
耐震基準の分かれ目となる1981年6月1日に以降において建築確認申請がされたマンションとはどういう意味でしょうか?
そもそも建築確認の日付とは、マンションを建築するにあたり、工事に着手する前に、その工事が建築基準法に適合しているかどうかが確認された日付になります。
建築確認申請日の注意
建築確認申請の日付(受理日)をマンションが建設された日(竣工日)と勘違いしている人が多いので注意が必要です。
また、1981年に建築確認がされたマンションといっても6月以前に建築確認を行っていれば、新耐震基準を満たさない可能性が高いので注意してください。
ここで新耐震基準を満たさない可能性が高いという表現をしている背景を説明します。
旧耐震基準の期間に建設されたマンションであっても、構造によっては実質的に新耐震基準を満たしている可能性があるからです。
これはあくまでも新耐震基準に基づく耐震性を有しているかどうかの違いであり、法律上の新耐震基準かどうかということとは別です。
この観点は深入りしないと把握が難しいので、皆様としては単純に建築確認の日付が1981年6月以降かどうかで新耐震基準かどうかを判断すれば良いです。
そしてマンションにはこの建築確認申請の日付を確認できる資料として、「建築確認通知書」があるはずです。
「建築確認通知書」はマンションの購入希望者であれば不動産仲介会社に、マンション管理組合の関係者であれば管理会社に問い合わせればにわかりますので、遠慮せずに確認しましょう。
なお、もしこの建築確認通知書が無い場合は、建物として再発行はできません。
しかし、行政の窓口(建築指導課)で「確認台帳記載事項証明」の発行を依頼することにより、この証明書にて建築確認の日付を確認することができます。
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4 耐震基準・耐震等級に関するマンションの構造の違い
新旧耐震基準に関係なく、マンションは大きく3つの構造に分類することができます。
耐震性能に関する3つの構造
- 耐震構造
- 制震構造
- 免震構造
4-1 耐震構造
マンションそのものの頑丈さで地震に抵抗する構造であり、大半のマンションがこの構造です。
直接地面からの揺れが伝わる構造のため、地震があったときには、マンションそのものに大きな負荷がかかります。
4-2 制震構造
マンション内の各所に揺れを制御するためのダンパーを配置し、ダンパーにより地震の揺れを吸収する構造です。
4-3 免震構造
地面とマンションの間にダンパーを設置し、マンション自体に揺れを伝えないようにする構造です。
安心・安全を担保するはずの免震構造に関して、残念ながら2015年には東洋ゴム、2018年にはKYBの偽装問題が発覚しましたね。
5 新耐震基準とは別の考えとなる新たな基準「耐震等級」
2000年には「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」が制定されました。
このことにより建築基準法の強度をベースに建物の強度を表現するために「耐震等級」という基準で新たに3つに区分がされるようになりました。
耐震等級
- 等級1:建築基準法と同程度の強度
- 等級2:建築基準法の1.25倍の強度
- 等級3:建築基準法の1.5倍の強度
6 新耐震基準のマンションに関する税制上の優遇
新耐震基準を満たしたマンションでは、税制上の優遇措置(住宅ローン減税)を受けることができます。
住宅ローン減税とは、住宅を購入する際にローンを組んだ場合、一定年数(購入時期によって若干異なる)、毎年の年末におけるローンの残高のうち、1%を所得税や住民税などの税金から控除することができる仕組みです。
例えば、住宅ローンの年末残高が4,000万円の人であれば、本来、納めるべき税金から4,000万円の1%にあたる40万円が控除されるという仕組みです。
現在では、新耐震基準を満たす建物であれば築年数に関係なく、この制度を利用することができます。
ただし、この制度を利用するためには、「耐震基準適合証明書」を取得している必要があります。
この証明書は取得するために、数万円の費用がかかりますが、持っていることにより、住宅ローン減税のみならず、不動産取得税の減額や地震保険の割引なども受けることができます。
まとめ マンションの耐震基準の調べ方!新耐震基準にいつから変わったか?
本記事のまとめ
- マンションの耐震基準の重要性
- マンションはいつから「新耐震基準」に変わったのか?
- 1981年6月から新耐震基準が適用された!確認すべき建築確認の日付の調べ方
- 耐震基準・耐震等級に関するマンションの構造の違い
- 新耐震基準とは別の考えとなる新たな基準「耐震等級」
- 新耐震基準のマンションに関する税制上の優遇
これだけ地震が多い日本ですから、過去の地震からも新耐震基準のマンションを選んだ方が良いことはわかります。
また、新耐震基準のマンションは耐震偽装問題という闇はあるものの、一定の安心面に加えて、税制の優遇措置もあります。
さらには中古流通市場において、旧耐震基準のマンションはどのように評価されているのかを考えてください。
特にデータを見る必要なく、皆様自身がマンションを購入することをイメージしたときに、旧耐震基準のマンションを購入するという選択肢を選ぶかどうかを考えてみればわかるでしょう。
進んで旧耐震基準のマンションを購入したいとは思いませんよね?
つまり、資産価値という面からも新耐震基準は必須条件になりつつあるということです。
新耐震基準の調べ方や意味合いを理解することで、皆様のマンション選びの役に立つことができれば幸いです。
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