マンションの機械式駐車場に空き区画が目立っていませんか?
このままの状態では無駄に維持修繕費用だけがかかり、マンション管理組合会計を逼迫させるだけです。
本記事では、機械式駐車場の空き対策である、機械駐車場を撤去して埋め戻すときの手順や注意事項を紹介します。
こんな方におすすめ
- マンションの機械式駐車場で空き区画がある管理組合の関係者
- 将来的な費用対効果を考えて、機械式駐車場を撤去することを考えている方
1 空き区画が増え続けるマンションに機械式駐車場存在している背景
機械式駐車場がマンションに設置されている背景としては、居住者の利便性に加えて、敷地にゆとりがないことから附置率を満たすことが目的となっています。
しかし、近年は車離れが進み、空きが目立ち、点検費用や定期的な修繕費ばかりが必要となり、金食い虫と呼ばれる機械式駐車場は、負の財産と認識され、撤去を検討する管理組合が増えています。
駐車場の附置率とは?
各行政によって定められているもので、附置率を50%と定めている地域に100戸のマンションを建設する場合は、50区画分を確保しないといけないといった規定です。
この規定があることにより、不要な機械式駐車場を撤去できないことがあります。
2 マンションにおける機械式駐車場の維持管理と撤去新設の費用
機械式駐車場には様々な形がありますが、一般的に年に3~6回の点検が必要となり、1回の点検あたり、1パレット2,500円~4,000円が必要となると言われています。
また、点検だけでなく、築年数が経過すれば、チェーン、基盤、モーター等、様々な部品の交換も必要となります。
さらには、設置から30年~40年すると、部品交換だけでは維持管理ができずに、機械そのものを一度撤去し、新設することが必要とされています。
機械式駐車場の撤去・新設費用
ようやく事例が増え始めており、一般的に撤去・新設費用は1パレットあたり、100~120万円の交換費用を見込む必要があります。
3 機械式駐車場の維持管理費用はマンション管理組合のどの会計から支出するのか?
結論としては、機械式駐車場はマンション管理組合の所有であり、日常の点検費用は管理費会計から、計画的な修繕費用は修繕積立金会計から支出することが一般的です。
実運用と標準管理規約の違い
標準管理規約では駐車場使用料は修繕積立金会計に計上するとしていますが、多くのマンションでは管理費の額を抑えるために管理費会計に組み込んでいます。
これを「間違っている」、「駐車場会計を設立し、そこの単体で収支が合うようにすべきだ」と主張する方がいますが、「間違ってもいないし」、「駐車場会計は不要」と考えます。
なぜなら、現実的にはマンション管理組合収支構造として、管理費会計は駐車場使用料収入をあてにして構成されているので見直すことは手間です。
また、これまでの実績と今後の見通しはそれほど手間がかからず確認できますので、単に会計区分が増えることにより、お金の流れが増える、口座が増えることの方が複雑で見づらくなると考えます。
さらには近年の業界的な管理委託業務費の値上がり傾向により、このような会計区分を分ける場合、管理委託業務費の増加に繋がることになります。
なお、これまで機械式駐車場に要した費用の総額と駐車場使用料収入を差し引きしてみると意外とマイナスにはならない管理組合は多いです。
しかし、それはこれまでの積み重ねがあったからで、将来的に使用料収入が減っていく状況では、機械式駐車場を撤去して平置駐車場にする埋め戻し工事をしてしまった方が、今後の維持管理費用を総合的に考慮すると、収支的な影響はプラスに働くことが多いです。
4 マンションで機械式駐車場を撤去するには附置率が大きな壁となる
ここまで読んでいただくと、空き機械式駐車場の対策として、撤去して埋め戻すことの検討は必須と考えられるでしょうが、実際に検討を開始したときに、附置率が大きな壁となります。
もし、この附置率に違反すると行政によっては処分をされる場合があります。
しかし、マンションにとって、駐車場の契約台数が減ることによって必然と使用料収入が減収となり、修繕費用は増加する一方という状況において、撤去・埋め戻しをぜひともしたいという考えを持つことは自然な流れです。
一部の行政によっては附置率を緩和する流れが見え始めてきたようですが、早く、社会的背景を理解した行政の的確な動きが求められている状況です。
5 空き問題を解決するために機械式駐車場を撤去して埋め戻すときの手順と注意事項
次の手順と注意事項を念頭において検討を進めます。
駐車場撤去の検討手順と注意事項
- マンションにおける駐車場の附置率の確認
- 機械式駐車場を撤去して埋め戻した場合の費用シミュレーションの実施
- マンションの構造計算
- 機械式駐車場の下に設置されている排水ポンプの撤去
- 総会の決議 マンション管理組合の管理規約の変更
- 総会の決議 長期修繕計画の見直し
- 電力会社に減設の手続き
5-1 マンションにおける駐車場の附置率の確認
まずはこれを確認しなければなりません。どれだけ駐車場が空いていても附置率を満たしておかないと条例違反等に繋がります。
5-2 機械式駐車場を撤去して埋め戻した場合の費用シミュレーションの実施
機械式駐車場を現状のまま使用した場合と、埋め戻した場合に必要となる費用をこの先30年程度の期間で試算します。
5-3 マンションの構造計算
機械式駐車場がマンションの地下にある場合など、構造の一部を担っている場合があります。
この場合、土を入れて埋め戻す方法では構造耐力に影響を与える可能性がありますので、構造計算が必要な場合があります。
5-4 機械式駐車場の下に設定されている排水ポンプの撤去
埋め戻す場合、機械式駐車場の下に設置されていた排水ポンプが不要になる場合があります。
ただし、水の排水経路等を確認し、本当に撤去するかは慎重に検討します。
5-5 総会の決議 マンション管理組合の管理規約の変更
そもそも機械式駐車場を撤去して埋め戻すことは共用部分の形状または効用の大きな変更にあたりますので、総会決議が必要となります。
また、駐車場の台数や使用料が変更となりますので、管理規約の変更も必要となります。
いずれの場合は、特別決議(組合員総数及び議決権総数の4分の3以上の賛成)が必要となりますので、ご注意ください。
注意:契約車両の移動
撤去する区画に契約車両が無い場合、悩む必要はありませんが、例えば3段式で横3列の機械式駐車場で現在5台の契約車両がある場合、撤去後には3台の平置き駐車場となるため、2台の契約車両の行き先がなくなります。
この場合、その他の区画に移動することや、場合によっては近隣の外部駐車場に移動してもらう必要がでてきますので、こちらで探して移動する契約車両を決定し、スムーズな総会決議を目指しましょう。
5-6 総会の決議 長期修繕計画の見直し
費用シミュレーションのときに、長期修繕計画における機械式駐車場に関する計画とともに、資金計画の見直しを行います。
上記5-5の総会を開催したタイミングで、同時に見直した長期修繕計画も承認を得ておくことが理想です。
5-7 電力会社に減設の手続き
機械式駐車場を埋め戻すとその分電気設備が減ることになります。
マンションは各設備を同時に使用した場合でも電力負荷に耐えることができることを想定した契約をしている場合が多いです。
その場合、基本料金が高くかかりますので、設備を減らすことによって、その分の基本料金を減らすことができる場合があります。
忘れると損をしてしまいますので、必ず電力会社に電力負荷の上限を減らす減設の申請をしておきましょう。
まとめ 機械式駐車場を撤去して経費を削減する手順と注意事項
本記事のまとめ
- 空き区画が増え続けるマンションに機械式駐車場存在している背景
- マンションにおける機械式駐車場の維持管理と撤去新設の費用
- 機械式駐車場の維持管理費用はマンション管理組合のどの会計から支出するのか?
- マンションで機械式駐車場を撤去するには附置率が大きな壁となる
- 空き問題を解決するために機械式駐車場を撤去して埋め戻すときの手順と注意事項
機械式駐車場の撤去には、附置率というハードルがありますが、多くの場合、空き区画が目立っていれば、埋め戻すことでメリットが見込めます。
行政も社会問題化するマンションの空き駐車場対策の一つとして、撤去して埋め戻すことの有効性は十分にわかっています。
行政の附置率の緩和に期待する一方で、各マンション管理組合が一度は機械式駐車場を撤去して埋め戻した場合のシミュレーションを実施してみる価値があるでしょう。
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