マンションの理事役員は管理組合の総会で選任されます。
あなたが理事長であれば引継ぎはどうしますか?
もしくは、総会で理事に選任されて、前期の理事から「今日からあなたが理事なので、理事会活動をよろしく。」と言われて何もしてもらえなかったらどうしますか?
今回はこのようなことで理事会活動に支障がでないように、新旧理事会の引継ぎ方法とそのポイントを紹介します。
こんな方におすすめ
- マンション管理組合の理事役員の方
- マンション管理組合の理事役員に選任される予定の方
1 マンション管理組合の新旧理事会の引継ぎ方法
管理組合理事に就任すると1年後の総会を迎えるころにようやく要領がつかめてきます。
そして、要領が掴めてきた理事はようやく理事会活動を終えることができるという気持ちが強くなり、1年前に自分がどれだけ理事会運営をわかっていなかったかということは忘れて、晴れ晴れとした表情で新役員に引継ぎをします。
このような場合の引継ぎ方法と言えば………「管理会社の担当者に聞けばわかります。」、「去年の資料が残っているのでそれを見ればわかります。」、「引継事項は特にありません。」といった感じでしょうか。
しかし、管理組合の自主性を考えたときに管理会社に頼らない新旧理事会の引継ぎは重要です。
管理組合運営は、過去の組合活動の歴史を重視しつつ、現在の課題を正確に把握することで、今後の適切な運営が可能になります。
注意するポイント
管理組合運営のサポートを依頼している管理会社の担当に頼ることは悪くはありませんが、自主性が失われることと、管理会社目線での引継ぎになりがちです。
また、本来、引継ぎのサポートすべき管理会社は、十分にフォローしてくれないと感じることが多いです。
引継ぎを受ける理事からすると「厳しい指摘を受けていた事案をこのまま下火にしようということや、引継ぎによって新役員のモチベーションが上がると大変だ。」という心理が働き、管理会社へのあたりがきつくなる人を見かけます。
この状況を回避するために、概ね次のような引継ぎ方法がありますので、必要と考える引継ぎ方法をとってください。
なお、これら引継ぎ方法は組み合わせてできる項目もあります。
一つずつ内容を紹介します。
理事会の引継ぎ方法
- 総会後に新旧理事会にて引継会を開催する
- 引継書を作成する
- 総会の2~3ヶ月前から理事会にオブザーバーとして役員候補が参加する
- 2年任期の半数改選制を採用する
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2 新旧理事が理事会活動の引継会を開催
オーソドックスな方法です。
ただ、引継会の多くは総会後に1~2時間程度で集まり、各担当理事からそれぞれ引継ぎを受けますが、個人によって引継ぎ内容の質が大きく左右されがちです。
「理事長さんや管理会社さんが引っ張ってくれたので何もすることがありませんでした。」というのはまだましで、「引継会に参加できないので、別の理事が引継ぎを行うこと」や、もっとひどい場合には、「後日引継ぐ」と言って、そのままにしてしまう場合もあります。
理事の数が多ければ多いほど、このようなスタンスの理事がいる可能性が高くなります。
引継ぎのポイント
引継ぐ内容は各理事に任せるのではなく、理事会として引継書を準備することや他の理事がフォローすることでしっかりとした引継ぎを行う必要があります。
3 マンション理事会活動の引継書を作成するポイント
作成は大変ですが書面を残すことで、いつでも引継ぎ内容を確認することができるメリットがあります。
そして、引継会の場では引継書を用いて説明をすることで充実した引継ぎが可能となります。
引継書のよくある構成を紹介します。
理事会引継書の構成
- 管理組合理事会活動の年間スケジュール
- 総会で承認を受け実行するだけの事案
- 前期理事会で検討したことがあるが結論が出ていない事案
- 前期理事会で検討せずこれから検討が必要となる事案
- マンション管理会社に依頼している事案
- 理事長・各理事役員同士が引継ぐ保管物
- 管理組合に関係する各所の連絡先一覧
3-1 管理組合理事会活動の年間スケジュール
参考例:総会をマンション内で開催するスペースが無い管理組合は、会場予約はいつすべきなのか、ゲストルームの年末年始利用に関してはいつ頃抽選を行うのかといった、年間のスケジュールを一覧表にまとめます。
3-2 総会で承認を受け実行するだけの事案
大規模修繕工事の実施を総会で決めた場合や自転車置場を増やす工事を実施することが決まった場合など、それらの実施に向けてやるべきことを記載します。
3-3 前期理事会で検討したことがあるが結論が出ていない事案
検討経緯やなぜ結論を出すことができなかったかを明確に引継ぎます。
3-4 前期理事会で検討せずこれから検討が必要となる事案
時間がなく検討できなかった事案や実施時期の兼ね合いから新理事会での検討が必要となるような事案を記載します。
例えば大規模修繕工事の検討を始める時期に該当するといったことは、長期修繕計画に沿って進められるため、旧理事会では検討することは無く、新理事会から検討が必要となる事案があります。
3-5 マンション管理会社に依頼している事案
管理会社に依頼している事案を記載します。この依頼事項の反応により管理会社の出来がわかります。
3-6 理事長・各理事役員同士が引継ぐ保管物
理事長印、積立マンションの保険証券、管理事務所の鍵等、これら現物を受け渡しする物の一覧を準備し、重要な物がしっかりと引き継がれるようにします。
3-7 管理組合に関係する各所の連絡先一覧
管理会社のフロントの連絡先や管理事務所、その他理事役員として知っておくべきメーカー等の連絡先一覧を記載します。
4 総会の2~3ヶ月前から新役員が理事会に参加して引継ぎを開始
この総会前の2~3ヶ月は1年の管理組合活動の総決算の時期に該当し、総会に上程する議案の確定や来期の予算を決める重要な時期です。
このタイミングから参加することにより、各事案に対してどのような背景があるのかということの理解が進みます。
議決権のないオブザーバー参加
このタイミングでは総会でまだ役員に選ばれたわけではないので議決権は無く、あくまでも理事会が認めたオブザーバーという位置づけで参加します。
また、理事会活動はどうしても一般的になじみが無く、役員に就任して数ヶ月は何を話しているのか、何をしなければならないのかがわかりません。
2~3ヶ月前から理事会に参加することで、スタートダッシュが可能となり、円滑な理事会運営にもたらす影響は大きいです。
5 マンションの理事役員の選出方法として2年任期の半数改選を採用
「管理組合の役員を2年間も務めるのは嫌だ」という人は多いと思いますが、実はこの方法が最も効果的だと思っています。
2年任期半数改選とは、例えば役員数が20名のマンションで、Aグループの10名は2021年に役員を退任し、新しく10名が役員に就任します。
そして、この新しく役員に就任した10名は2年間役員を務めます。
また、2021年に残ったBグループの10名は2022年まで役員を続けて、2022年に理事役員を退任し、新しく10名の役員が就任します。
このように役員を改選していくと1年目と2年目の役員が半々となり、半分の役員は1年間管理組合運営を経験したことがある状況となることで、検討の経緯や1年目の役員を引っ張っていくことができます。
マンション総合調査結果
平成30年の調査結果では、57%のマンションが理事役員の任期は1年です。
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まとめ マンション管理組合理事会の引継ぎ方法とポイント
本記事のまとめ
- マンション管理組合の新旧理事会の引継ぎ方法
- 新旧理事が理事会活動の引継会を開催
- マンション理事会活動の引継書を作成するポイント
- 総会の3ヶ月前から新役員が理事会に参加して引継ぎを開始
- マンションの理事役員の選出方法として2年任期の半数改選を採用
各引継ぎ方法を組み合わせることで、引継ぎの質を高め、管理組合活動を円滑に進めることができます。
管理組合役員は自分のプライベートの時間を使い、マンションのことを考えるわけですから確かに大変です。
また、聞きたくもない情報、例えば隣の住民が管理費を滞納しているといったことも耳にするかもしれません。
しかし、自分の財産を自分で守っていくということを強く意識すれば、自然と紹介したような引継ぎを行われると思います。
今回の記事がきっかけとなり、皆様の理事会運営が円滑になれば幸いです。
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