【こんな疑問や悩みを解決】
- マンション管理組合の監事の業務内容、権限を知りたい
- 不正を行っている理事長を止めたい
マンション管理組合の監事の役割は「楽そうだ。」、「年に1度だけ報告すればよい。」と考えられ誤解されています。
監事が持つ権限の一部は理事長を超えるとも考えられるものがあり、理事長等が不正をしたときに一人の権限で止めることができるのは監事だけです。
本記事は区分所有法や標準管理規約を参考にしながら、重要な監事の役割を権限とともに紹介します。
5分程度で読むことができるようにまとめていますので、参考になれば幸いです。
1 マンション管理組合の「監事」は「役員」であり「理事」ではない
マンション管理組合の役員は「理事」と「監事」から構成されています。(飲み会の「幹事」ではありませんのでご注意ください)
そして、少し管理組合運営を知っており、「理事会活動で楽をしたい」と考える人が、立候補しやすい役職です。
楽をしたい人が監事を選ぶ理由
なぜなら、この監事という役職は平成28年(2016年)の標準管理規約の改正により、理事会への出席義務が加えられたものの、まだ多くの管理組合で「監事の理事会への出席義務は管理規約で定められていない」からです。
背景としては、管理規約を変更することが大変といったことや、これまで出席義務が定められていなかったということに加え、監事が理事会に出席しても、理事会の成立要件の「理事」の半数以上という条件には含まれていないことも要因の一つです。
このようなこともあり、監事の選び方として、過去の理事長等にその経験を活かしてもらうために狙い撃ちで就任をお願いするという前向きな依頼方法があります。
一方で、総会での監査報告ぐらいしかやることもないと考えられ、役職内定の場に参加していなかった方に就任を依頼するという後ろ向きな依頼をする管理組合も多いことが実態です。
それではまず、標準管理規約における監事の役割・定義を確認しましょう。
2 理事長を超える?総会を開催できるほどマンション管理組合の監事の権限は大きい
さて、標準管理規約を見た時に、少し違和感を覚えませんか?
実は監事の権限は理事長以上?とも思わせる規定があります。
その規定は臨時総会の開催に関連します。
臨時総会とはその言葉通り、通常総会とは別に臨時で総会を開催し管理組合の重要なことを決議する総会であり、この臨時総会を開催する方法は大きく3つあります。
臨時総会を開催する3つの方法
- 理事会で決定して開催する
- 5分の1請求で開催する
- 監事の権限で開催する
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2-1 臨時総会の開催方法 理事会で決定して開催する
単純に理事会決議により、臨時総会を開催する最もオーソドックスな方法です。
2-2 臨時総会の開催方法 5分1請求で開催する
簡潔に言えば、組合員総数と議決権総数の5分1以上の賛成を集めれば臨時総会を開催できます。
しかし、この規定を適用し臨時総会を開催する場合は、現在の理事会運営に不満がある場合や、臨時総会の開催を拒否したという前提となりますので、望ましい状況でないケースが大半です。(大半どころか全てですかね?)
2-3 臨時総会の開催方法 監事の権限で開催する
標準管理規約第41条3項の規定に基づき、監事は理事会の承認もその他組合員の承認も無く、臨時総会を開催できます。
これってすごい権限ですよね。
想定したくはありませんが、悪意を持てば、理事長が管理会社と癒着していると理由をこじつけ、管理会社の変更を求める臨時総会を開催することができます。
また、同じようなこじつけで大規模修繕工事の工事会社の決定を覆すことを目的とした総会も開催できます。
もしこのような総会が開催されようとしても、まっとうな理事会や組合員が反対派になり阻止をしますが、そのパワーは大変なものになります。
ここまで紹介したことだけでも監事の重要性をお分かりいただけましたか?
3 マンション管理組合において重要な監事の役割(業務監査と会計監査)
監事の役割は大きく二つあり、「業務監査」と「会計監査」です。
この役割を果たしたうえで、通常総会にて監査報告を行います。
一般社団法人マンション管理業協会が監査のチェックリストや監査報告書のひな型を公表していますので、参考にしてください。
管理業協会の監査関係のひな型
それでは、業務監査と会計監査がどのような内容かを確認します。
3-1 監事の役割 業務監査
理事会に出席しながら、理事会や総会の決議が正しい手続きと公平な観点から判断されているかといったことや、管理規約等に基づき、理事会決議が行われているのかを確認します。
よく理事会決議に参加してしまう監事がいますが、監事には議決権がありませんのでご注意ください。
また、総会で決定された事業計画や予算に基づき、清掃、点検、工事等が適切に行われているのかを確認します。
3-2 監事の役割 会計監査
監事という名前からしてわかりやすいかもしれませんが、管理組合の財産が適切に管理されているかを確認します。
具体的には総会での決議に基づいた予算執行かどうか、使途があいまいな支出が無いかといった不正に繋がるような確認です。
万が一、理事長や理事会がこういった不正を行ったときに、臨時総会を開催するために、前述した監事に臨時総会の招集権限を与えています。
なお、この会計監査は事業年度が終了したタイミングで管理会社から提出される決算書(収支報告、貸借対照表、滞納情報、領収等)を確認します。
また、人によっては備品台帳や現物と照らし合わせて確認される方もいます。
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まとめ マンション管理組合の監事の役割と権限
本記事のまとめ
- マンション管理組合の「監事」は「役員」であるが「理事」ではない
- 理事長を超える?総会を開催できるほどマンション管理組合の「監事」の権限は大きい
- マンション管理組合において重要な「監事」の役割(業務監査と会計監査)
多くのマンションで監事の業務を本格的にこなせる人はあまりいませんので、会計士等に依頼するケースが若干ではありますが増えてきています。
しかし、会計士は会計のプロであっても、管理組合運営のプロではなく業務監査は得意ではありません。(小さなマンションでは委託費用がネックとなり、依頼したくてもできないといったケースもあります。)
また、金融機関に勤める方が監事になることもありますが、会計監査はできても業務監査はなかなか難しいもので、管理組合は独特な組織のため、そもそも企業会計に携わっていても理解しにくいことが現状です。
しかし悲観する必要はありません。
監事に求められることは公平性、おかしなことをおかしいと指摘できることができれば、ほぼ監事の役割は達成できます。
多くのマンションでは管理会社に業務を委託しており、管理会社は善管注意義務を負っており、おかしなことがあれば指摘しなければならない立場です。
特に大手であれば、万が一、お金に関する不正等に繋がっても、大手という看板・ブランドからも損失が補填されると思います。
監査手順も管理会社に依頼すれば丁寧に教えてもらえることが大半なので、良い経験と思って、あまり気負わず監事という役割を担ってみてもいいかもしれません。
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