お住まいのマンションで理事役員のなり手不足に困っていませんか?
理事役員のなり手がいないため、順番が回ってきたときに、ご主人(組合員=名義人)は仕事で忙しいから、仕方なく配偶者(名義人でない)に代わりに役員になってもらおうという方もいるのではないでしょうか?
ちょっと待ってください。まずは管理規約を手元に用意して、理事役員に就任できる資格条件を確認してみましょう。
実は、配偶者が理事役員に就任することは、管理規約に違反する可能性があります。
本記事ではマンション管理組合の理事役員のなり手不足が深刻化する中、資格条件を変更することにより対策を講じる方法を紹介します。
こんな方におすすめ
- マンション管理組合で理事役員のなり手が少なく困っている方
- 将来的な理事役員のなり手不足に備えて今から対策を取っておきたい方
1 マンション管理組合の理事役員の資格条件
標準管理規約をベースに説明すると、第35条(役員)には「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。」との規定があります。
ただでさえ、マンションでは理事役員のなり手が不足していますが、この規定では、配偶者は名義人でないため、役員に就任することができません。
では、どのようにすれば配偶者はマンション管理組合の理事役員に就任できるのでしょうか?
この観点から管理規約を読み解くことにより、役員のなり手不足の解消に繋がる方法を紹介します。
2 マンション理事役員のなり手不足を解決するための資格条件の緩和
配偶者を理事役員に選任するためには管理規約を次のように変更しておけば就任できます。
「理事および監事は組合員、またはその組合員の配偶者から総会で選任する。」
これは資格条件の緩和の一例として、配偶者が役員に就任できるようにするための方法ですが、その他にも、理事役員のなり手不足を解決するために、次のような方にも就任資格を緩和することが考えられます。
役員就任資格の緩和対象
- 一親等や二親等以内の成人の親族
- 組合員が法人の場合は法人の役員や従業員
- 賃借人
2-1 理事役員に就任する資格を親族に広げる場合
親族という観点で資格要件の緩和を行う場合には、配偶者といっても「婚姻届けは出さずに事実婚のような状況」は資格要件を満たすのかということを明確にしておいたほうがいいでしょう。
2-2 理事役員に就任する資格を法人に広げる場合
所有者が法人の場合には理事会検討事項の継続性を保つために、「予め理事会に届け出た法人の役員や従業員」といったような明確な規定にすることが重要になります。
法人は役員になれない?
管理組合の理事役員は自然人を前提としており、法人が就任することはできないため、その法人の役員や従業員を実務者として選任する必要があります。
2-3 理事役員に就任する資格を賃借人に広げる場合
賃借人が役員に就任できるようにする場合は、管理費、修繕積立金を負担する義務が無い者が役員に就任できることで、計画を持たず、どんどん貴重な財源を使ってしまう可能性に注意する必要があります。
対策として「賃借人は理事長には就任できない」といったことや「賃借人の役員は、全役員数の●分の1以内とする」といった記載をすることにより、このようなリスクを軽減することや、明確な管理規約の規定とすることをお勧めします。
3 管理組合の理事役員を選任する資格条件から「現に居住する」を削除
2011(平成23)年7月に国土交通省から発表された標準管理規約からは、役員のなり手不足の実態を考慮し、所有する部屋を賃貸に出しているような、「マンションに現に居住しない組合員」も役員に就任できるように変更されました。
具体的には、「現に居住する組合員のうちから総会で選任する」としていた規定を「組合員のうちから」とし、現住規定を削除し、マンションに住んでいなくても役員に就任できるように規定を変更しました。
4 理事役員の就任資格に関するマンション総合調査の結果
2011年の標準管理規約の変更から2年後の2013年(平成25年)の国土交通省によるマンション総合調査の結果では、居住していない組合員を役員として選任できると定めているマンションはわずか18.9%でした。
また、居住組合員の同居の親族であれば理事役員に就任できると定めているマンションは20.4%、さらには賃借人が役員に就任できるマンションはわずか3.3%でした。
まだ前述の標準管理規約の変更が浸透していない時期に実施された調査の結果とはいえ、これが多くのマンションの実態であり、調査から5年以上が過ぎた2018年の調査はどのような結果になったのでしょうか。
2018年(平成30年)のマンション総合調査の結果が出ましたので、その結果を確認しましょう。
賃借人の就任は難しさがありますので、賃借人にも就任資格を与えている割合はほぼ変わりませんが、全体的には少しずつ役員資格の拡充の動きが確認できます。
マンション総合調査の結果
2018年(平成30年)と2013年(平成25年)の調査結果の比較()内が2013年の結果
☑居住していない組合員を役員として選任できると定めているマンションはわずか21.4%(18.9%)
☑居住組合員の同居の親族であれば就任できると定めているマンションは25.0%(20.4%)
☑賃借人が役員に就任できるマンションはわずか3.0%(3.3%)
マンション総合調査は、国土交通省が概ね5年毎に無作為に抽出された全国の管理組合、区分所有者を対象に実施するアンケート調査です。
管理費や修繕積立金の平均値、長期修繕計画書や滞納の有無といった管理組合運営に参考となる様々な情報がまとめられており、約2,000組合がこのアンケートに回答しています。
まとめ マンションの理事役員のなり手不足を解決するための資格条件の変更
本記事のまとめ
- マンション管理組合の理事役員の資格条件
- マンション理事役員のなりて不足を解決するための資格条件の緩和
- 管理組合の理事役員の資格条件から「現に居住する」を削除
- 理事役員の就任資格に関するマンション総合調査の結果
多くの管理組合で、規約違反のまま、役員を選任してしまっているケースがあります。
管理規約の変更は「組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上」が必要となる特別決議です。
ぜひとも理事役員のなり手不足を解決するための方法として、実態と管理規約の整合性を合わせておいてください。
また、円滑な理事会運営ができない可能性がある外部にお住まいの方が理事長に就任するといったことや、外部の方ばかりが役員となり、理事会成立もままならないという状況は回避すべきです。
そのためには、次のような規定をすることでリスクを軽減しながら、役員のなり手不足を解決する一つの方法として選任条件の緩和を検討してみてください。
リスクヘッジ案
- 「理事長は現に居住する理事の中から選任する」
- 「現に居住しない役員は、全役員数の●分の1以内とする」
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