マンション管理組合 役員(理事・監事)

マンション管理組合の役員報酬は必要か?メリット・デメリットのまとめ

マンション管理組合の役員報酬を計算する様子

 

マンション管理組合の役員に就任することは、区分所有者の権利でもあり、義務でもあります。

 

この義務を果たすことに対価は必要か?不要か?

 

マンション総合調査の結果や役員報酬を支払うことのメリット・デメリットを整理し、判断材料を提供します。

 

こんな悩みを解決したい

  • マンション管理組合で役員報酬を支払うかべきか悩んでいる
  • マンション管理組合で役員報酬の金額をいくらにすべきか悩んでいる

 

 

1 マンション管理組合役員の業務をどう考えるか?

自分の仕事を抱えているから役員に就任することは厳しいと言う方は多いと思います。

 

そのため、管理組合活動に関することは、仕事が終わってからか、土日などの休みに実施することになります。

 

また、管理会社に多くの業務は委託しますが、理事長になると管理会社(特に管理員)からの相談・報告、捺印業務、時には住民トラブルの仲裁も行わなければならないため、時間的負担が多いことは間違いありません。

 

なお、役員就任は義務といっても、ある種仕事に近いものでもあり、標準管理規約には役員は報酬を受け取ることができると定められています。

 

 

 

2 役員報酬を出しているマンションの割合と報酬額

マンション管理組合の役員報酬を計算する様子

 

役員経験がある皆様は、「そういえば報酬をもらっていない」とおっしゃられる方が多いと思います。

 

管理規約には役員報酬の支払いについて定めがあるものの、役員報酬を出しているマンションは多くはありません。

 

それでは2018年(平成30年)のマンション総合調査の結果から状況を確認してみましょう。

 

2-1 役員報酬の支払いの有無

支払いの有無割合()内は2013年(平成25年)の調査結果
報酬は支払っていない73.3%(73.1%)
役員全員に支払っている23.1%(20.6%)
理事長のみに支払っている 1.1%(1.2%)

 

ただし、これは全体の数値で、実際にはマンションの規模が大きくなればなるほど報酬を支払っている管理組合の割合は多くなり、200世帯超では40%を超えてきます。

 

これは大型マンションほど、検討事項が多く役員の負担も大きいことからこの傾向に繋がっているのではないかと思います。

 

2-2 役員報酬の支払い金額

では、役員報酬を全役員に対して一律で支払っている管理組合ではいくらぐらい支払っているのか確認します。

 

約半分が月額3,000円以内という結果です。

 

理事会の開催時間(2ケ月に1回、2時間程度)を考えても、時給換算で500~1,500円程度という報酬額です。

 

報酬額割合
月額 0~1,000円30.1%
月額 1,001~2,000円17.5%
月額 2,001~3,000円 5.8%
月額 3,001~10,000円12.8%
月額 10,001円~4.9%

 

2-3 理事長の役員報酬の支払い金額

最後に負担が多い、理事長の報酬額を確認してみます。これは役員報酬が一律でない場合の理事長の報酬額です。

 

確認すると5,000円以内で56%と半数以上を占めるものの、月額10,000円超えもなんと20%以上との結果です。

 

これを見ても理事長の負担感は別格と認識されていますね。

 

月額の報酬額割合()内は2013年(平成25年)の調査結果
月額 0~1,000円 6.8%(6.8%)
月額 1,001~2,000円14.2%(13.6%)
月額 2,001~3,000円16.3%(14.2%)
月額 3,001~4,000円3.4%(5.4%)
月額 4,001~5,000円15.4%(13.0%)
月額 5,001~10,000円16.6%
月額 10,001円~20%(22.7%)

 

マンション総合調査とは?

マンション総合調査は、国土交通省が概ね5年毎(前回は2018年:平成30年)に無作為に抽出された全国の管理組合、区分所有者を対象に実施するアンケート調査です。

            

管理費や修繕積立金の平均値、長期修繕計画書や滞納の有無といった管理組合運営に参考となる様々な情報がまとめられており、前回は約1,700組合がこのアンケートに回答しています。

 

 

3 マンションで役員報酬を支払うことのメリット・デメリット

3-1 役員報酬を支払うメリット

  • 管理組合業務の実施に対して、金銭という形で報いることができる。
  • ただ働きという気持ちを抑えることができ、少しでもモチベーション維持、向上に繋がる。
  • 責任感が増し、積極的に管理組合運営に関わるようになり、結果として全体の管理の質のアップに繋がる。

 

3-2 役員報酬を支払うデメリット

  • 役員報酬のみが目当てで役員に立候補する人がいる。
  • 区分所有者から「報酬を支払っているのだから、しっかり組合業務を行ってもらわないと困る。もっとしっかり組合業務を行うべき」との意見が出て、役員のプレッシャーとなる。

 

 

4 マンション管理組合が役員報酬を支払う場合に必要なこと

標準管理規約のように「報酬を受けることができる」との定めがあるマンションでも、規約に記載があるから報酬を支払うという決定をすることは避けられた方がよいと思います。

 

報酬を支払うためには少なくとも次の二つの手順を踏む必要があると考えます。

 

4-1 管理規約・使用細則等で役員報酬額を明確に定めておく

例:標準管理規約がベースです。

 

管理規約●条 役員は管理規約第37条の規定に基づき報酬の支払いを受けることができる。

 

役職月額報酬額
理事長月額●円
副理事長月額●円
会計理事月額●円
理事月額●円
監事月額●円

 

ポイント

可能であれば支払方法や時期等を定めておくと、円滑な運用に繋がります。

 

4-2 予算案に役員報酬額を見込んでおく

また、役員報酬を支払うことを定める場合に、前述のデメリットに記載したような理由から「報酬はいらない。」という意見が出ます。

 

その代わり、役員に就任しない人の対策として「役員辞退の協力金・辞退金」を設定してはとの意見に繋がります。

 

一方が正しく、もう一方が間違っているというものではありませんので、管理組合によってどの方向で進めたいかということを十分に検討して進めればよいと思います。

 

なお、役員報酬は必要経費の支払いと異なり、給与所得の源泉徴収の対象となりえますのでご注意ください。

 

「役員辞退の協力金・辞退金」については次の記事をご覧ください。

 
 

 

まとめ マンション管理組合の役員報酬は必要か?

本記事のまとめ

  • マンション管理組合役員の業務をどう考えるか?
  • 役員報酬を出しているマンションの割合と報酬額
  • マンションで役員報酬を支払うことのメリット・デメリット
  • マンション管理組合が役員報酬を支払う場合に必要なこと

 

報酬を支払うかどうかは物事の本質ではありません。

 

報酬を支払うことによって、どのような効果を期待し、それを管理組合運営に反映させるのかという観点を重要視してください。

 

役員報酬の必要性を検討する際には役員辞退の協力金・辞退金のあり方も同時に検討する必要があります。

 

マンション内で双方の観点から十分な検討を行い、合意形成をとったうえで進めることにより、良い管理組合運営が実現できるものと考えます。

 

本記事が皆様の参考となれば幸いです。

 

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