分譲マンションを購入すると必ず加入するのがマンション管理組合です。
マンション管理組合は共用部分の管理を目的とした組織で、管理費等の管理や共用部分の維持管理を担います。
所有者がそれら業務を自ら実施していくことは難しいので、分譲時から管理組合が実施すべき一定の業務を特定の管理会社に委託することが決まっています。
ではこの管理会社は変更できるのでしょうか?
本記事では、マンション管理会社を変更(リプレイス)することのメリット・デメリットをまとめました。
こんな方におすすめ
- マンション管理会社に不満がある管理組合の関係者
- 管理委託業務費の削減を考えている管理組合の関係者
1.マンション管理組合は管理会社を変更(リプレイス)することができる
一般的にマンション管理組合は管理業務(理事会、総会支援業務・管理員業務、清掃業務・会計業務・各種点検業務等)を管理会社に委託しています。
この委託先である管理会社を変更することを「リプレイス」と呼びます。
「自主管理をしているマンションを知っているよ」という人もいらっしゃるかと思いますが、自主管理は区分所有者に大きな負担がかかりますので、自分の時間を自由に使える人が多く、マンション管理に意識が高い人が管理組合内にいることが大前提となります。
ココに注意
自主管理では特定の人に頼った運営を行い、最初は善意で行っていた理事会活動を私物化してしまう残念な例も見られますので、あまりお勧めできません。
2.マンション管理組合が管理会社を変更(リプレイス)する目的
リプレイスを検討する主な理由です。
リプレイスの目的
- 管理委託業務費を削減したい
- 競合他社のサービス・金額と比較したい
- 管理会社のフロント担当・管理員等のスタッフに不満がある
- 管理会社そのもの(組織の在り方、企業姿勢等)に不満がある
2-1 管理委託業務費を削減したい
管理費会計が逼迫している場合や、余剰はあるものの削減できた分を修繕積立金に充当したいというような状況です。
管理業界の構造として事業主(分譲主)系列の管理会社は、競争原理が働かず高く設定されがちと言われています。
ココがポイント
しかしながら最近では、管理委託業務費が高いと必然と管理費が高くなりますので、管理費を抑えマンションを購入しやすくするために、系列会社だとしても、厳しい価格設定がなされているケースも増えてきています。
2-2 競合他社のサービス・金額と比較したい
例えば家電はその機能と価格を比較してから購入する方が多いと思います。
しかし、管理会社という存在はマンションを購入した時から選定されており、比較する機会はありません。
他社が提供しているサービスや現在の管理委託業務費の水準を知るために比較を行い、適正な価格と品質で管理組合が望むサービスを受けることができるようにします。
2-3 管理会社のフロント担当・管理員等のスタッフに不満がある
理事会の都度、顔を合わすことになるフロント担当が理事会の指示通りに動かない、依頼事項に手をつけないといったことがきっかけとなります。
また、最も住民と接点のある管理員、清掃員も管理会社への評価として大きく影響します。
2-4 管理会社そのもの(組織のあり方、企業姿勢等)に対する不満
不祥事をはじめ、フロント担当や管理員に仕事を任せた(押し付けた)ままで、協力部門等がバックアップを行う等の企業姿勢が見られないことから、組織的な対応に関する長年の不満が積み重なっているような場合には改善は難しいです。
原因は企業体質なのかそこに関わるスタッフの問題なのか、本質的な部分を確認したうえで判断することが大切です。
あわせて読んでほしい
3.マンション管理会社を変更(リプレイス)するメリット
リプレイスのメリット
- 競争原理が働き管理委託業務費が削減できる
- 管理仕様と品質の適正化を実現できる
- マンション管理に対する区分所有者の意識が高まる
3-1 競争原理が働き管理委託業務費が削減できる
他社と比較することにより削減が実現できる場合があります。
削減分は駐車場使用料の減収や消費税増税による支出の増加による管理費会計の逼迫を解決することや、不足しがちな修繕積立金会計に充当することができます。
ココに注意
ただし、最近では人件費高騰やマンション管理業界の流れが変わったことによって、値下げどころか管理委託業務費は上がる傾向にあります。
3-2 管理仕様と品質の適正化を実現できる
これまで管理仕様の見直しを行ったことが無い場合、今の管理仕様が住民の潜在的ニーズに合致していないことがあります。
結果的にリプレイスをすることがない場合でも管理に関し理解を深める機会となりますので、管理組合が求めるサービスが明確となり、管理組合・管理会社双方に良い緊張感が出ることにより品質もアップします。
適正な管理仕様のチェック
- 管理員や清掃員の人数が多く、暇そうにしていなか?
- 居住者があまり管理事務所を訪れない時間まで管理員が勤務していないか?
- 過剰に点検を実施している設備が無いか?
3-3 マンション管理に対する区分所有者の意識が高まる
リプレイスの検討過程ではアンケートや説明会を行うことから住民の管理に対する意識が高まります。
結果として管理会社を変更しなくても、この経験は管理組合にとってとても大切な財産となります。
4.マンション管理会社を変更(リプレイス)するデメリット
次はデメリットです。
リプレイスのデメリット
- これまでのマンション管理実績の継続性が途切れる
- 安かろう、悪かろうによる管理品質の低下に繋がる
- マンション管理組合内でのトラブルに繋がる
- 新管理会社への過剰な期待により逆に不満が増加する
4-1 これまでのマンション管理実績の継続性が途切れる
表面上の継続性(引継ぎ)はできますが、書類だけではわからない過去の経緯、現管理会社が住民と積み重ねてきた信頼が無くなることにより、理事会運営が大切とするべき過去の経緯がわからなくなります。
4-2 安かろう、悪かろうによる管理品質の低下に繋がる
リプレイスの場面では共通の仕様で見積もりを取得するため価格勝負になりがちです。
しかし、共通の契約・仕様であっても、そこに記載されない業務内容や品質は管理会社のスタンスによって大きく異なることを理解する必要があります。
ココに注意
価格が大幅に安い場合にはそれなりの理由があると考えた上で、管理会社を選定する必要があります。
4-3 マンション管理組合内でのトラブルに繋がる
理事会内だけでなく、住民も巻き込んだ意見の対立(現管理会社を擁護する人と変更したい人・価格を重視する人と品質を重視する人等)が出てきます。
この対立は住民同士のトラブルに繋がります。
ココに注意
悪意(癒着等)を持った役員等によるリプレイスの誘導といった行動からも問題が生じます。
4-4 新管理会社への過剰な期待により逆に不満が増加する
新管理会社には注目や期待が集まります。
ただ、マンションに合わせた管理の実現には、これまでの経緯の把握や業務フローの確立、建物に関する理解といったことが絶対に必要です。
どれだけ優秀なスタッフでも一定の時間が必要で、着任早々、前管理会社がスムーズに行っていた業務に時間がかかってしまうことも多々あります。
ココがポイント
新管理会社への期待はしつつも、お互いに考えを擦り合わせていく準備期間は2~3年は必要と考えないと、せっかく選んだ新管理会社への不満が大きくなり、管理組合として無駄な労力を費やすことになります。
まとめ マンション管理会社の変更(リプレイス)のメリット・デメリット
リプレイスには役員に大きな負担がかかるだけでなく長期(半年~1年)の検討も必要となることから、大規模修繕を控えた時期等には実施できる余裕はありません。
ココがおすすめ
現在の管理会社がいわゆる大手と呼ばれる位置づけであれば、リプレイスありきではなく、現在の管理会社をベストパートナーとして、お互いに高めあっていくことができる関係を構築することに力を入れることをお勧めします。
管理会社のスタッフも人間です。無理難題を押し付けられると疲弊します。
厳しいことばかり投げかけず、評価するべきところはしっかりと伝えて、良い関係を構築しましょう。
リプレイスを検討することはその努力をした後でも十分で、状況が好転しないときの最後の手段としてお考えください。
リプレイス市場が変わり始めた~管理会社が自ら撤退?~
続きを見る
管理継続を辞退!住友不動産建物サービスが変えた管理業界の常識
続きを見る
管理費・管理委託費を削減するコンサルはマンション管理組合のためになるのか
続きを見る
マンション管理組合が管理会社を変更(リプレイス)する時の進め方と注意点
続きを見る
マンション管理会社の変更(リプレイス)を検討する理由…本当にフロントだけがダメなのか?
続きを見る