こんな方におすすめ
- 管理会社から管理継続辞退の提案があった
- 管理会社から管理委託費の値上げの提案があった
- 管理会社から契約条件の仕様ダウンの提案があった
- リプレイス市場の流れを知っておきたい
- 管理会社と管理委託契約の交渉をしている、もしくは交渉予定
これまでの管理会社のスタンスといえば、リプレイスの話が上がれば大幅な値引きをしてでも管理を継続するというスタンスが多く、管理会社が自ら撤退の意志を表明することは非常に珍しいことでした。
そのため、この動きは市場に大きな衝撃を与えました。
今回は住友の撤退方針やリプレイス市場の変化について考えてみます。
1 住友不動産建物サービスの管理撤退方針
住友から撤退を通告された管組合の特徴は次のとおりです。
①不採算
管理会社は慈善事業ではありませんので当然の判断軸ですが、これまでの管理業界は規模(管理受託戸数)の拡大を目指していたので不採算でも管理を受託していたため、不採算となっている管理委託契約が散見される。
②住友ブランドではない
自社グループで建設したマンションに経営資源を投入していくという考え。
③遠隔地に立地している
従業員の肉体的な負担や効率性・採算を考えて継続すべきでないという考え。
2 住友不動産建物サービスの意志の強さ
管理会社と管理組合は一般的に一年間の期間で管理委託契約を結んでいます。
ただし、たとえ契約期間中であっても3ヵ月前に通知をすれば解約できるとの条文があります。(標準管理委託契約に基づく)
これまでこの文言は、管理会社の対応に満足しない管理組合が一方的に管理会社に解約を通知するために使用されることが一般的でした。
しかし、今回の住友の撤退方針は、たとえ契約期間中といえども途中解約を前提に解約を進めており、基本的には例外対応はしないとの強い姿勢を見せています。
これまで管理会社にとって不採算の管理組合は、リプレイス市場で収益が厳しい中でも管理戸数の拡大のために無理をして受託した(もしくは工事事業での利益を目的に受託)、管理をしている中で他社とのリプレイス競争でやむなく大幅に委託料を減額して受託したことが多かったです。
そのため、そのマンションを担当する社員としては管理を継続する意義を感じにくく、厳しい言葉を投げかけられることも多いことから疲弊する一方でした。
このような背景から、管理終了を通告されたマンションの多くは担当者の負担感も大きく、住友にとっては、社員を守る姿勢、今後の管理方針を明確にしたということができます。
今は管理終了に向けて大変な時期ですが、順調に解約が進むことで、社員の疲労感の軽減、働き方改革、収益構造の改革に向けて着実に歩みを進めていると思います。
3 変わり始めたリプレイス市場の構造
リプレイス市場が変化を始め、リプレイスを行うことで、「より安く、より良い管理を実現した」という言葉を聞かなくなる時代を迎え始めていると思います。
考えてみれば日本全体が安くてより良いサービスを求めてきました。
一方で本来あるべき「価格相応のサービス」という概念が忘れさられ、管理会社にとっては皮肉にも、規模・ストックの拡大という大命題のもと、価格競争という波に抗うことはできませんでした。
しかし、あまりにも急激に人材不足という課題が大きくなり、さらには給与を上げても人が集まらない時代を迎える中、管理員や清掃員を派遣する会社も事業撤退を始めるようになりました。
このような背景から、管理組合がリプレイスを考えたときに見積書の提出を管理会社に依頼しても、断られるケースすら出始めました。
管理組合が管理会社を選ぶという構造から、管理会社も管理組合を選ぶというリプレイス市場の構造変化が始まったといってもいいかもしれません。
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4 リプレイスに対する考えの変化を求められる管理組合
引退した世代の中には自身が働いていたときに身に付いた常識から、昨今の人件費高騰、人材不足を受け入れることができない方が多くいます。
これが管理会社が撤退する理由の一つでもあることに管理組合側が気付くべきです。
管理会社には管理組合が求めるサービスを実現するために正当な対価を支払う必要があるだけでなく、末永く付き合うパートナーとして前向きに話し合っていく意識の変化が必要です。
管理組合にとっては駐車場使用料収入が減少することや消費増税、修繕積立金不足により、金銭的な負担は増加する一方です。
また、管理費や修繕積立金を増額することは該当期の理事会にとって大きな負担です。
しかし、管理組合が求める管理を実現するために増額が必要であれば一日でも早く取りかからないと手遅れになります。
今が評価されるマンション、管理組合になっていく岐路に差し掛かっているのではないでしょうか。
まとめ リプレイス市場が変わり始めた~管理会社が自ら撤退?~
管理会社、管理組合を取り巻く環境は確実に変化し始めています。
管理会社のできないこと、できていないことを責めても管理会社は疲弊するだけで、お互いの考えを尊重して良い管理を実現するために双方が歩み寄ることのできる信頼関係を築くことが何より重要だと思います。
管理会社はサーバント(使用人、召使)ではありません。
ご自身が所属する管理組合がモンスター化していないか?、一線を超えて管理会社社員を傷つけていないか?、言動を見つめ直したうえで、管理会社に求めることを今一度考えてみてください。
その考えに共感できなければ、管理会社から管理委託契約の終了を通告される時代を迎えつつあることを実感すると思います。
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