管理規約

マンションの管理規約の違反者への対応方法と手順~罰則規定は必要か?~

管理規約違反を住民に指摘する理事長
 
管理規約はマンションにおける法律のようなもので、所有者だけでなく居住者も対象にしており、安心、快適にマンション生活を過ごすためのルールが定められています。
 
 
アシスタント
もし、管理規約に違反したらどうなりますか?

 

管理組合としては、管理規約に基づいた対応と、状況によっては区分所有法に基づく対応が可能になります。
ふどみつ

 

アシスタント
区分所有法…つまり法律に基づくということは罰せられるということでしょうか?

 

一番厳しい手段として強制的に部屋を競売にかけることができる規定もあります。
ふどみつ

 

このやりとりのように部屋を競売にかけることができる管理規約の違反者の対応に関し、管理組合としてどのように対応すべきでしょうか。

 

また、違反者に区分所有法とは別に罰則規定を設けることについて、どのような規定や考えを参考にするべきかといった情報をお届けします。

 

【こんな人に読んでほしい】

  • 管理規約の違反者に罰則を与えることを検討したい方
  • マンションに管理規約の違反者がいて、解決するための対応を検討したい方

 

 

1 マンションで代表的な管理規約の違反事項

各マンションの管理規約の多くは国土交通省が公表している標準管理規約を参考に作成されていて、トラブルに繋がる管理規約の違反事案の多くは次の事項です。

 

よくある管理規約違反

  • 管理費や修繕積立金等の滞納
  • バルコニーの使用(禁煙や物置の設置等)
  • ペットの飼育(飼育禁止マンションでの飼育。共用部に放すといった飼育マナー)

 

そして、理事会で規約違反に関する議題が上がったとき、理事会として対応を検討するのですが、「違反者に罰(ペナルティ)を与えたい」、「再発防止のために罰則規定を設けたい」という人が出てきます。

 

まずは区分所有法に基づき実施できる対応策を確認しましょう。

 

 

このように区分所有法に基づき、管理規約の違反者に対して一定の厳しい措置は可能ですが、日本はアメリカのように訴訟社会ではありません。

 

また、同じマンションに住む者同士、このような「出るとこ(裁判所)に出て決めましょう」ということは避けたいものです。

 

この段階にたどり着くまでに違反者への対応と今後の再発防止は重要なのですが、効果がないことをしても意味がありませんので、対応方法や考え方を確認していきます。

 

 

2 マンション管理規約の違反者への対応方法

マンションの管理規約集

 

管理規約の違反行為が発覚したときには、必ずご自身のマンションの管理規約の規定に立ち返ることが大切です。

 

国土交通省が発表している標準管理規約をベースに考えると、第66条(義務違反者に対する措置)と第67条(理事長の勧告及び指示等)に基づき、理事会にてどのように判断して対応するかが焦点となります。

 

理事会の目的は「違反行為をやめてもらうこと=管理規約を遵守してもらうこと」となるので、同じマンションに住む者同士として、初めから強硬に区分所有法第57~60条に基づく対応を目標に話しを進めることはお勧めできません。

 

話しがこじれないようにするためには、次の手順を参考にしてみてください。

 

管理規約違反の対応ステップ

  • 管理規約の違反者に是正の注意を促す
  • 管理規約第67条に定められた理事長からの勧告
  • 法的措置前の最後の壁 ~何とかここで解決したい~
  • 最終手段 法的措置を講じる

 

2-1 ステップ1 管理規約の違反者に是正の注意を促す

マンション管理規約の違反者に注意を促す

 

まずは、直接にせよ、文面にせよ、管理規約の違反者に柔らかく管理規約違反の事実を伝え、注意を促します。

そのうえで違反の状況はいつ頃改善されるのかという見通しを確認します。

 

ここで違反者から明確な是正の時期が示されれば、後はその期日まで待つだけです。

期日通りに是正されればほっと一息ですね。

 

サッカーで言えばイエローカードの段階です。

 

2-2 ステップ2 管理規約第67条に定められた理事長からの勧告

管理規約の違反者から返事がない場合や、期日通りに是正されなかった場合、次のステップに移ります。

 

このステップでは管理規約第67条に定められた、理事長からの勧告を行います。

 

勧告の注意ポイント

勧告は今後のトラブルの発展(法的措置)を想定し、書面で行います。

 

また、書面には管理規約に基づく理事長の勧告であることを明示します。

そして、是正期日を設け、その期日通りに対応がされない場合は、法的措置に移行することを示唆します。

 

2-3 ステップ3 法的措置前の最後の壁 ~何とかここで解決したい~

ステップ2まで進めて事態が進展しないとなると状況は深刻です。

 

極力トラブル(裁判等)にならないように、もう一度、手順1や2を繰り返すべきと言われる人も出てきますが、あまり効果はないでしょう。

そうなると法的措置を講ずるための準備を進めます。

 

法的措置を講ずる前の最後の壁

部屋番号・氏名を記載した総会に上程する議案の案文を作成し、「この議案を総会に上程するので、全戸に配付する予定ですよ」と案内すると、状況が改善する場合があります。

 

2-4 ステップ4 最終手段 法的措置を講じる

マンション管理規約の違反者に法的措置を講ずる

 

実行する法的措置の内容に応じて、理事会や総会の決議を行い、法的措置を講じます。

 

理事会決議か総会決議か?

区分所有法第57~60条に基づき対応することは総会の決議が必要ですが、標準管理規約第60条のように管理費等の滞納に関して少額訴訟を実施する場合は、理事会決議で可能という規定もあります。

 

ここまでくれば弁護士(少額訴訟は有償ですが管理会社で手続きを全て行う場合もあり理事長が当日裁判所に出向き簡単な質問に答えるだけ)に任せる段階なので、粛々と進めるだけです。

 

過去の経験で、何十回も書面、面談を繰り返し解消することができなかった管理費等の滞納が、総会に上程され、裁判になると分かったときから、急に振り込みが始まり、100万円の滞納が解消されたことがありました。

 

 

 

 

 

3 管理規約の違反者に区分所有法とは別に罰則規定を設けることの本質

個々のマンション管理規約に罰則規定を設けることができるか?との問いへの答えは、「できる」です。

 

しかし、想像してみてください。

 

前述したステップで対応して違反状況が解決しないような方に、罰則を設けても意味があると思いますか?

 

罰則規定を設けたいという意見で多いのが罰金です。

もし、管理費等の滞納者であればそもそも「罰金を払え」ということ事態がナンセンスですよね。

 

また、どのように徴収するのか?といったことや、禁煙とされているバルコニーでの喫煙やペット飼育の違反の実態を、いつ、誰が、どのように証拠を残して、罰則を適用していくのかといったことも悩ましい課題です。

 

さらに罰則規定が管理機違反の抑止効果になるのか?といったことも考えなければなりません。

 

考えるべき罰則規定の効果

法律や公序良俗に違反しない範囲では、罰則規定も設けることは有効な管理規約となります。

しかし、上記のことからも、罰則規定を定めることの有効性事態があまり意味のないものと言えます。

 

 

 

まとめ 管理規約の違反者に罰則規定を設けることについて

本記事のまとめ

  • マンションで代表的な管理規約の違反事項
  • マンション管理規約の違反者への対応方法
  • 管理規約の違反者に区分所有法とは別に罰則規定を設けることの本質

 

管理規約に罰則規定を設定したいという方の気持ちはわかります。

しかし、管理規約や罰則規定を定めることの本質として、実際にはどのような影響をもたらすかを立ち止まって考えていただきたいです。

 

そのうえで、効率的かつ実効性のある判断をしていくことが、よりよい管理組合運営に繋がります。

 

管理規約の違反に関連して、管理費の滞納、バルコニーでの喫煙問題、ペットの飼育トラブルに関する記事がありますので、ぜひ参考にしてください。

 

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