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マンション管理費・積立金の滞納対策~滞納解消のための督促と予防策~

管理費滞納を解消するための督促方法

 

【解決したい悩み・課題】

  • 管理費・積立金の滞納を解消したい
  • 管理費・積立金の長期滞納者がいて対策を知りたい

 

マンション管理組合の理事長や役員をしていて管理費の滞納で悩んでいませんか。

 

管理費の滞納、手順を踏んで対応していけば多くの場合解決することができます。

 

なぜなら対策が限られているからです。

 

本記事では管理費の滞納を解消方法を紹介するだけでなく、滞納が減る仕組み、滞納が発生しても仕組みで早期に解決していく方法も紹介します。

 

内容としては少々ボリュームがありますので、読むのに10分程度かかると思いますが、弁護士に依頼する以外の対策や法的知識に関しては、最後までお読みいただければ管理費等の督促、解消方法に関して、基礎的なことは理解できます。

 

 

1 管理費・積立金の滞納者はマンションにどれくらいるのか

管理費を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンション管理組合の割合はどれくらいだと思いますか?

 

国土交通省が概ね5年毎に実施するマンション総合調査の2018年(平成30年)の結果では、24.8%です。

 

つまりマンションが4つあれば、1棟は3ヶ月以上にわたり管理費を滞納している住戸が存在しているということです。

 

 

2 管理費・積立金を滞納する理由を理解することが重要

管理費対応の督促方法を思いつく様子

 

管理費を滞納する理由は人それぞれです。

 

実は滞納が全て悪いというわけではなく、「時間が解決してくれる滞納」と「管理組合として対策が必要な滞納」に分けられます。

 

管理組合の中には、「滞納は1円たりとも許さない」という人がいますが、滞納に関しては意図的に管理組合(債権者)が滞納者(債務者)に逃げ道を残しておく必要があります。

 

そのためには滞納をする理由と対策を知る必要がありますので、紹介していきます。

 

 

3 時間が解決してくれる管理費・積立金の滞納問題

管理費を滞納する理由(時間が解決してくれる滞納)

  • 管理費の引き落とし口座を変更、口座入金の一時的な残高不足
  • 駐車場使用料等の引き落とし開始の手続き中
  • 区分所有者死亡後の相続手続き中
  • 抵当権者による担保不動産競売の手続き中

 

3-1 管理費の引き落とし口座を変更、口座入金の一時的な残高不足

区分所有者が新たに銀行口座を作成し、管理費の引き落とし口座を変更したいときに、手続き上の問題で1~2ケ月、滞納が発生してしまう場合です。

 

また、生活費と管理費の引き落とし口座を別にしており、管理費の引き落とし口座に資金移動を忘れた場合に発生します。

 

このような背景のため翌月には滞納は解消されますので問題のない滞納と判断できます。

 

3-2 駐車場使用料等の引き落とし開始の手続き中

例えば来月から駐車場を使いたい場合、駐車場の使用料は来月から管理費と一緒に引き落としをすることになりますが、この使用料引き落としの開始手続きが間に合わない場合があります。

 

この場合は必然と滞納になりますが、手続き上、仕方のないことであり、引き落としが開始されれば滞納は解消されます。

 

3-3 区分所有者死亡後の相続手続き中

管理費の引き落とし口座を変更する場合と同様の考えです。

 

あくまでも手続きが間に合っていないだけですので、問題ありません。

 

3-4 抵当権者による担保不動産競売の手続き中

マンションを購入する時に多くの人は銀行でローンを組みます。

 

ローンの支払いが一定期間(半年程度が多い)滞ると、ローンの債権者(銀行等の金融機関)は担保不動産競売の手続きを取ります。

 

この競売によってマンションを買い受けた新たな所有者が、マンションの所有権とともに滞納を引き継ぐことになりますので、滞納金額が支払われるのを待つことになります。

 

ここで注意すべきポイントとして、法的に新所有者に引き継がれる滞納は管理費と修繕積立金ですので、駐車場使用料といった滞納があると完全に解消できない場合があることを知っておいてください。

 

しかしながら、多くの場合、滞納された駐車場使用料が支払わなければ、管理組合に損害が発生することから、新所有者が理事会から白い目で見られますので、競売で落札されれば滞納は解消されることが一般的です。

 

管理費・積立金の滞納解消のタイミング

競売に参加するのは転売目的の不動産会社が多く、滞納の解消はこの不動産会社がマンションを売却できたタイミングとなります。

 

 

4 マンション管理組合として対策が必要な管理費・積立金の滞納

管理費を滞納する理由(管理組合として対策が必要な滞納)

  • 経済的困窮、破産、倒産
  • マンションの所有者が不明
  • 滞納者から所有権を引継いだ特定承継人の支払拒否
  • 管理組合、管理会社への不満等の意図的な支払い拒否

 

これらの場合、督促対象者(支払い義務者)を間違えず、管理組合として取ることができる督促方法を一つずつ丁寧に取っていく必要があります。

 

4-1 経済的困窮、破産、倒産

ローンを組んでいた場合、担保不動産競売をきっかけに滞納が解消されます。

 

管理組合として対応が困難になるケース

ローンを支払い終えている場合や管理費の支払いを後回しにローンを支払い続けている場合は、競売にもならず、税金等の差し押さえもかからず、対応が困難になります。

 

破産によって免責となった滞納管理費(破産手続き開始前の滞納)は、破産者に対して請求できなくなります。

 

しかし、あくまでも破産者に対して請求できなくなるだけで、債権そのものが消滅するわけではありません。

 

マンションを売買(競売含む)し、専有部分を買い受けた新所有者には、区分所有法8条に基づき、破産者に対して免責された滞納管理費も請求することができます。

 

 

4-2 マンションの所有者が不明

所有者が不明だと、管理費を請求する相手がいません。

 

管理費の支払い義務者に注意

例え配偶者や親せきがいても法的にこの人たちが管理費を支払う義務はありませんし、当然ながら管理組合としてこの人たちに請求もしてはいけません。

 

配偶者であれば管理費の督促書面を見て、義務感から支払う人も中にはいますが、そもそも督促をしてはいけないので注意が必要です。

 

所有者が誰かわらず管理費の滞納が増えていくという問題は、リゾートマンションなどで表面化しています。

 

 

4-3 滞納者から所有権を引継いだ特定承継人の支払拒否

これはたちが悪いケースが多いです。

 

法的には管理費の支払い義務を負っているのですが、相続等でマンションの所有者になった場合に、様々な理由をつけて(もしくは督促を無視)支払い義務を理解しようとせず、支払いを拒みます。

 

4-4 マンション管理組合、管理会社への不満等の意図的な支払い拒否

問題をすり替えるパターンです。

 

「過去に管理組合や管理会社に要望を出して対応してもらえなかったので管理費は払いません」と言って管理費の支払いを拒否します。

 

仮に管理組合や管理会社に落ち度があっても管理費の支払いとは別問題です。

 

 

5 管理組合が実施する法的措置を含む管理費・積立金の滞納の督促方法

管理費滞納の解消ために法律を確認する弁護士

 

管理組合としては費用をかけず最小の手間で滞納を解消したいと考えます。

 

しかし、法的措置をとる場合には一定の弁護士費用が発生し、例えば10万円の滞納を解消するために20万円をかけて弁護士に依頼するかといったジレンマに陥ります。

 

それでも管理費を毎月支払っている所有者に示しがつかないとして法的手続きを取る管理組合や、そもそも法的手続きでしか解消できない状況に陥っている場合もあります。

 

費用対効果も考えながら順を追って対策を講じていく必要があります。

 

管理費・積立金滞納の督促方法

  • 訪問、書面による督促
  • 内容証明郵便による督促
  • 少額訴訟
  • 支払督促
  • 強制執行、競売

 

なお、督促にあたり管理費滞納者の氏名を公表したいという意見が出ますが、名誉棄損やプライバシーの侵害といって逆に訴えを起こされ、余計な手間がかかこともありえますので、氏名の公表はできるかぎり避けることをお勧めします。

 

 

5-1 面談や書面による督促

管理組合役員が直接滞納者と話をします。

 

例えば月に3万円ずつ支払うといった約束をして、理事会で毎月の支払状況を確認します。

 

また、管理会社から滞納の事実は通知されますが、管理組合名で次のことをまとめて書面を送ると効果を発揮する場合があります。

 

管理組合名による督促書面の作成ポイント

  • 滞納金額
  • 支払い期日を指定
  • 期日までに支払いが無い場合、駐車場契約や自転車置場を解約する意思があること
  • 不誠実な対応をした場合、管理組合内で部屋番号、氏名を公表すること(実際に公表するかは慎重に判断する必要がある)

 

5-2 内容証明郵便による督促 費用数千円

内容証明郵便で書面を送ることにより、管理費を支払わなければならないと思わせる効果があります。

 

また、内容証明郵便であれば実際に受け取ったかどうかがわかりますので、滞納があったことを知らなかったと嘘をつく滞納者の言い訳をつぶすことができます

 

さらに、数万円の費用はかかりますが、弁護士名で送ることにより心理的な圧迫効果が期待できます。

 

なお、管理費の滞納は5年で時効を迎えますが、時効を迎えそうなときに法的措置を講じる準備期間として内容証明郵便を送ることで、半年の間に法的措置を講じれば良いという猶予期間を設けることができます。

 

 

5-3 少額訴訟 費用1~2万円(弁護士に頼まない場合)

少額訴訟とは、管理費滞納で、請求する金額が60万円以下(滞納の総額でなくても古い滞納から60万円以内のとなる期間の請求でOK)の場合に利用できる法的措置です。

 

原則として、指定された1日(実際には10分程度)で審理を終了し、口頭弁論終了後、すぐに判決が降ります。

 

管理費滞納の時効は5年であり、滞納が解消できずに時効を迎えてしまう場合には、法的措置で債務名義(強制執行するために必要なもの)を取得する必要があり、債務名義は取得するとそこから時効は10年となります。

 

債務名義を取得しない場合、滞納者に時効の援用を主張されると時効を迎えた管理費は請求できなくなります。

 

なお、滞納者が少額訴訟ではなく、通常訴訟に移行したいと申し入れた場合、通常訴訟に移行しますが、費用も手間もかかるため、このような申し入れをする滞納者は特殊でしょう。

 

ただし、もし通常訴訟に移行したときのことや少額訴訟で滞納が解消されなかったときのことや訴状を管理組合が用意する手間を考え、費用はかかりますが、弁護士に依頼するという選択肢も十分に考えられます。

 

5-4 支払督促 費用2~30万円

支払督促は、通常の裁判手続より費用と時間をかけずに債務名義を取得できる方法です。

 

裁判所に行く必要もなく費用も通常訴訟の半分程度と言われています。

 

滞納者が異議を申し立てなければあっさりと債務名義が取得できます。

 

管理費滞納者による異議申し立て

しかし、滞納者が異議を申し立てると通常の訴訟手続へ移行してしますので、基本的には理事長(管理者)が管理組合の代表者として滞納者と争うことになります。

 

支払督促も少額訴訟と同様に異議を申し立てる滞納者はよほど特殊でしょう。

 

5-5 強制執行、競売 費用数十万円

少額訴訟や支払督促での債務名義をもとに、給与・動産(自動車や絵画)・マンションを強制執行の対象として法的措置を講じます。

 

強制執行の対象とするものによって費用に差はありますが、いずれも数十万円はかかります。

 

また、給与がなかった、動産に価値がなかった、マンションの競売が認められなかった等、申し立てたからといって滞納が解消されるとは限りませんので、この段階では覚悟を持って手続きをとる必要があります。

 

なお、一般的な競売とは別に、区分所有法に基づいた、マンション管理組合のための特別な競売の方法があります。

 

区分所有法59条の競売

競売には区分所有法59条に基づく申し立てがあります。この申し立ては、この方法以外で滞納問題は解決するのは困難でないと認められないと言われており、近年判決は増えてきていますが、管理組合が勝訴するには、ハードルはかなり高いです。

 

 

管理組合が講じたことのある管理費滞納を解消するための方法(2018年マンション総合調査結果)

督促方法

割合(重複回答OK)

文書等による督促

70.9%

少額訴訟

5.3%

支払い請求等の訴訟

7.2%

強制執行

1.3%

競売

2.2%

特に措置を行っていない

3.6%

これまで滞納者が発生したことがない

10.9%

不明

13.2%

 

 

6 マンション管理組合が管理費・積立金の滞納を予防するための対策

滞納金額が大きくなれば、支払いが難しくなります。

 

そのために重要なことは、早期の対策と回収です。

 

このことを念頭に置いて、管理費滞納の予防対策を紹介します。

 

管理費滞納の予防対策

  • 理事会での滞納者報告を定例化する
  • 滞納者に対する督促フローを定める
  • 標準管理規約第60条をベースにした管理規約にする

 

6-1 理事会での滞納者報告を定例化する

理事会を開催したときに管理会社から会計報告を受けていますか。

 

会計報告のポイントはいくつかありますが、滞納状況の報告を重要視してください。

 

理事会の定例議題の中に、管理費の滞納状況報告をいれて、次に紹介する督促フローが確実に履行されているか確認しましょう。

 

6-2 滞納者に対する督促フローを定める

滞納が発生する度に理事会で対応を検討していては、その他重要な議題の審議ができません。

 

滞納期間が半年程度までは管理会社の裁量で粛々と督促ができるようなフローを理事会で決めておくことで、理事会の期が変わっても同じ対応が継続されます。

 

管理費滞納の督促フロー

滞納期間

督促・対策

1ヶ月

・管理会社から督促状の送付

2ケ月

・管理会社から督促状の送付

3ヶ月

・管理会社から督促状の送付

・管理組合名での督促状の送付

・管理組合役員による訪問

・駐車場や自転車置場等の契約解除、使用禁止の予告

4ヶ月

・管理会社から督促状の送付

・駐車場や自転車置場等の強制解約

5ヶ月

・管理会社から督促状の送付

・理事長名による内容証明郵便の送付

6ヶ月

・管理会社から督促状の送付

・少額訴訟実施の予告(実際に総会議案の形で部屋番号や氏名を入れた書面にすると効果的)

7ヶ月以降

・管理会社から督促状の送付

・滞納額や状況に応じて法的措置の実施

 

6-3 標準管理規約第60条をベースにした管理規約にする

支払い方法、遅延損害金、弁護士費用の請求、理事会決議での訴訟提起(別途区分所有法で定める59条競売等除く)を定めておくことで滞納が発生した際の対応が円滑にできます。

 

標準管理規約とマンション管理規約を比較してみて、定められていない項目があればすぐに反映しておくことをお勧めします。

 

 

 

まとめ マンション管理費・積立金の滞納対策~滞納解消のための督促と予防策~

本記事のまとめ

  • 管理費・積立金の滞納者はマンションにどれくらいるのか
  • 管理費・積立金を滞納する理由を理解することが重要
  • 時間が解決してくれる管理費・積立金の滞納問題
  • マンション管理組合として対策が必要な管理費・積立金の滞納
  • 管理組合が実施する法的措置を含む管理費・積立金の滞納の督促方法
  • マンション管理組合が管理費・積立金の滞納を予防するための対策

 

管理費の滞納者が出ないことが一番の理想ですが、将来的な相続問題やそもそも経済的な困窮などは望んで陥る人はいません。

 

滞納者が出たときに必要な対策を迅速に取っていくことで滞納はある程度は抑えることができます。

 

本記事が滞納で悩む管理組合のお役に立てば幸いです。

 

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