マンションの大規模修繕工事は10数年に一度の大きなイベントで多額のお金が動くため、トラブルになることも多いです。
大規模修繕工事をトラブルなく円滑に進めたいと多くの人が思うでしょう。
しかし、マンションでリベート、癒着、業者の言いなりといった問題はなくなりません。
トラブルに繋がりやすいマンションの大規模修繕工事に関し、円滑に工事の検討を開始できるように、大きく3つある発注方式のメリット・デメリットを紹介します。
こんな悩みを解決したい
- 大規模修繕工事の発注方式を知りたい
- 大規模修繕工事に透明性を持たせて進めたい
- マンション管理組合の役員で大規模修繕工事はトラブルばかりと聞くので不安がある
1 理事長が知っておくべきマンションの大規模修繕工事とは?
マンションにおける大規模修繕工事とは、概ね10数年毎に外周に足場をかけて実施する、計画的でまとまった修繕工事のことです。
大規模修繕工事を理解するためのポイント
- 足場をかけて実施する工事であること
- 建築系の工事であること
大規模修繕工事を理解するためのポイントは足場をかけるということです。
足場が無い状態でバルコニーの修繕をしようとしても、在宅調整が必要となり手間と費用がかかります。
しかし、足場があれば在宅調整は不要で、工事業者の組んだスケジュールに沿って進めることができるだけでなく、高いところにあって普段は手が届かないタイルの剥がれ等、各種修繕工事をまとめて実施することができます。
また、主に建築系の工事であることもポイントです。
よく「大規模修繕」という言葉から、電気設備、給排水設備の更新も一緒に実施したいと考えられる方もいます。
大規模修繕工事のココに注意
防水、外壁・鉄部塗装、タイル・床シートの張替え等の建築系の工事を得意とする会社と設備系の工事をする会社は別であり、工事の相関性もありませんので、工事の仕上がり、経費の面からも別々で実施することをお勧めします。
大規模修繕工事は、多額の費用を要することだけでなく、実施において住民の協力が必須であり、日常の小修繕とは異なります。
計画から完了まで数年を要し、大規模修繕工事を成功させるためには、専門委員会の立ち上げ、建物劣化診断の実施、工事範囲・仕様・金額の決定、施工会社の決定等、多くのプロセスを経てそれぞれの段階で的確な判断をする必要があります。
これら多岐にわたることを管理組合役員だけで進めるのは難しいです。
2 マンション大規模修繕工事の3つの発注方式
まずは大規模修繕工事の検討を開始するにあたり、どのような相手先にどのような業務を依頼すればいいのか、わからない方が多いです。
大規模修繕工事を実施するために採用される発注方式は大きく3つあります。
それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
大規模修繕工事 3つの発注方式
- 責任施工方式
- 設計監理方式
- CM(コンストラクションマネジメント)方式
3 マンション大規模修繕工事の発注 責任施工方式のメリット・デメリット
マンション管理組合が元請会社と工事契約を締結し、元請会社の全責任のもと、工事を実施する方式です。
透明性が担保できないと言われ、この方式を選んだマンションは、マンション管理士や設計事務所から、元請会社の「カモ」や「言いなり」と揶揄されます。
これだけでなく、理事長や修繕委員長と元請会社に何かしらの癒着があるとまで言われることがあります。
「管理組合と元請会社との圧倒的な信頼関係」、もしくは「管理組合の無関心」の上に成り立つ方式と言えるでしょう。
責任施工方式における管理組合の契約締結先
- 大規模修繕工事を実施する施工会社
- マンション管理会社
メリット | デメリット |
元請会社にすべてを任せる(誤解を恐れずに表現すれば丸投げ)ことができるので管理組合役員や修繕委員の負担が軽くなる | 施工会社の工事品質をチェックする役割・機能(監理者が不在)がなく品質面に不安が残る |
設計・監理会社が間に入らないので、報酬を支払う必要がない | 金額面から総会で合意が得られにくい |
管理会社を元請会社とすることで、相手が逃げることができない状況で保証を受けることができる(管理会社と信頼関係があることが前提) | 競争原理が働かず、元請業者との癒着を疑われる |
4 マンション大規模修繕工事の発注 設計監理方式のメリット・デメリット
マンション管理組合と施工会社が直接大規模修繕工事の契約を締結し、管理組合と設計監理会社が工事監理業務の契約を締結する方式です。
工事仕様の設計と工事施工を別業者が行うことで、設計会社が設計通りに工事が実施されているのか、施工会社が設計通りに工事を確実に実施することで、工事品質を担保します。
設計監理会社の役割は工事が契約書に基づき実施されているかという観点から、管理組合の立場になり、技術的なサポートを行います。
このことにより工事品質を担保することができ、施工会社が手抜きできないような状況を作り出します。
施工会社に加えて設計監理方式における管理組合の契約締結先
- 設計監理会社
- 一級建築事務所
- マンション管理会社
- マンション管理事務所
メリット | デメリット |
設計図書に基づく相見積書の取得と比較により、金額の妥当性が明確になる | 工事費用とは別に監理費用が必要となる |
建物劣化調査診断と工事設計を請け負った会社に工事監理業務を依頼することにより、技術的なサポートを受けることができ工事品質を担保できる | 検討に時間を要し、管理組合役員、修繕委員の負担が大きい |
| 国土交通省が警鐘を鳴らす不適切コンサルと契約してしまった場合、知らないうちに高い工事費用を支払うことになる |
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5 マンション大規模修繕工事の発注 CM方式のメリット・デメリット
近年、管理会社や設計会社が各社なりのアレンジをしながら増えてきている方式ですので明確にこの方式がCM方式であると伝えにくいのですが、概略を紹介します。
管理組合から依頼を受けたサポート役であるコンストラクションマネージャー(CMR)が大規模修繕工事に関わる技術的な管理をするとともに、設計、発注方式、工程管理等、各種マネジメント業務の全て、または一部を担当します。
責任施工方式における元請業者が実質的にはCMRの役割を果たしているという考えがあります。
しかし、責任施工方式の場合、下請業者との契約を管理組合に開示はせず、管理組合に下請け業者を選択する裁量権はありません。
一方でCM方式では下請業者に関する裁量権が管理組合にあり、どの業者に依頼するかまで検討することができ、選択の透明性を担保することができます。
施工会社に加えてCM方式における管理組合の契約締結先
- 大規模修繕工事を実施する施工会社
- マンション管理会社
メリット | デメリット |
CMRから管理組合の立場で、設計段階から技術的な助言を受けることができる | CMRとの打ち合わせの負担がかかり、管理組合として決定すべきことが多い |
大規模修繕工事の全体像がとお金を支払う意義が「見える化」でき、透明化、工事品質の担保に繋がる | 管理組合の意思決定次第では検討に時間を要することになる |
まとめ 大規模修繕工事の発注方式は3つ~各方式のメリット・デメリット~
本記事のまとめ
理事長が知っておくべきマンションの大規模修繕工事とは?
マンション大規模修繕工事の3つの発注方式
マンション大規模修繕工事の発注 責任施工方式のメリット・デメリット
マンション大規模修繕工事の発注 設計監理方式のメリット・デメリット
マンション大規模修繕工事の発注 CM方式のメリット・デメリット
大規模修繕工事は多額のお金が動くため、そこに利益だけを求めて寄ってくる人がいます。
しかし大規模修繕工事は資産価値を維持、向上させるために、区分所有者・住民のために行われるべきものです。
一人一人の意識が変わることで満足度の高い工事は実現できます。ぜひとも今回ご紹介しました進め方や注意点を参考に、積極的に大規模修繕工事の検討に関わってみてください。
きっと貴重な経験になりますよ。
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