大規模修繕

マンション管理組合理事長に向けた大規模修繕工事の進め方と注意事項

大規模修繕工事の進め方と注意点をメモする理事長の様子
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マンションの大規模修繕工事は10数年に一度の大きなイベントで多額のお金が動くため、トラブルになることも多いです。

大規模修繕工事は資産価値を維持、向上させる重要なターニングポイントとなるため、進め方と注意点を紹介します。

こんな方におすすめ

  • 大規模修繕工事の検討を始めるマンション管理組合理事長、修繕委員
  • 大規模修繕工事の進め方を知りたいマンション住民
  • 大規模修繕工事を円滑に進めたい方

 

 

 

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1.理事長が知っておくべきマンションの大規模修繕工事とは?

マンションにおける大規模修繕工事とは、概ね10数年毎に外周に足場をかけて実施する、計画的でまとまった修繕工事のことです。

 

ココがポイント

足場をかけるということがポイントです。

普段バルコニーの修繕をしようと思っても、在宅調整が必要となり手間と費用がかかることや、高いところにあって普段は確認することができないタイルの剥がれ等、足場をかけることによって各種工事をまとめて実施することができるからです。

 

また、主に建築系の工事であることもポイントです。

よく「大規模修繕」という言葉から、電気設備、給排水設備の更新も一緒に実施したいと考えられる方もいます。

 

ココに注意

防水、外壁・鉄部塗装、タイル・床シートの張替え等の建築系の工事を得意とする会社と設備系の工事をする会社は別です。

工事の相関性もありませんので、工事の仕上がり、経費の面からも別々で実施することをお勧めします。

 

大規模修繕工事は、多額の費用を要することだけでなく、実施において住民の協力が必須であり、日常の小修繕とは異なります。

計画から完了まで数年を要し、大規模修繕工事を成功させるためには、専門委員会の立ち上げ、建物劣化診断の実施、工事範囲・仕様・金額の決定、施工会社の決定等、多くのプロセスを経てそれぞれの段階で的確な判断をする必要があります。

 

検討項目は大変多く、進め方を間違えると住民トラブルにも繋がりますので、大規模修繕工事の無事完了させるための進め方と注意点を紹介します。

 

 

2.マンションの大規模修繕工事の進め方と注意点

検討から工事の開始まで、数年を要する一大イベントのため、最初にすることは、大規模修繕工事の進め方のイメージを管理組合の中で合意形成を行い、共有する必要があります。

 

つきましては、設計監理方式を前提とした、着工までの一般的な進め方と注意点を紹介します。

 

2-1 大規模修繕委員会の発足

修繕委員会のメンバーは、一年毎に交代する管理組合役員ではなく、継続的に大規模修繕工事に関する検討に参加できる、やる気と専門性を持った修繕委員を公募し、立候補いただいた方を中心に発足します。

 

注意点!

新築マンションでの修繕委員会発足の目安は築10年とお考えください。

また、すでに1度は大規模修繕工事実施しているマンションでは、前回の実施から10年程度が目安となります。

 

ココがポイント

大規模修繕工事の目安が概ね12~15年程度と言われている背景にある、鉄部塗装工事を概ね6年毎に実施すること、シーリング材が10年ほどで劣化すること、防水の補償は10年で終了するといったことから、総合的に考えられた実施時期から逆算した目安です。

※大規模修繕工事の実施時期には法令上の制限はありません。

 

2-2 建物劣化調査診断会社の選定

どれだけ大規模修繕工事の経験が豊富な専門家でもマンションの外観を見るだけで、詳しい調査もせずに大規模修繕工事の実施時期を見定めることはできません。

そのために、まずは建物劣化調査診断を行い、実施時期を見定める必要があります。

 

建物劣化調査診断は、塗装の状況、タイルの浮き、塗膜の付着力、バルコニー側の立ち入り調査等を行い、建物の劣化状況を正確に把握し、実施時期の目安を定める重要な調査です。

 

注意点!

診断を実施した会社にその後のコンサルティング業務、工事監理を依頼することが一般的です。

昨今、国土交通省が警鐘を鳴らしている不適切コンサルは、そうでない会社に比べ、これらに要する費用が安価です。ここは十分に注意してください。

 

 

ココに注意

建物診断の見積もりを依頼したときに、安価な値段で業務を受けるという会社は怪しいと思ってください。

特に複数社から相見積もりを取得し比較したときに、異様に安価な業者があることがあります。

この段階で関与できないと工事まで関わることができませんので、建物診断を安く、工事の施工会社からリベートを受け取り儲けを出すという仕組みが王道です。

 

しかし、多くの管理組合では「なぜ高いのか?」を掘り下げることは多くても、「なぜ安いのか?」を深堀りすることはあまりされません。

この分野を深堀するだけでも不適切コンサルを見抜くための十分な対策となります。

 

管理組合の中には1円でも安い業者に依頼することを美徳としているところもありますが、安かろう悪かろうといったことや、結果として表面的には工事費に上乗せされた費用からコンサルの利益に繋がっていることがあります。

 

ココがポイント

建物劣化調査診断・コンサル・工事監理料は、基本的には人件費を積み重ねた価格です。

 

1級建築士等それなりの資格、キャリアを持った方に業務を依頼することについて、その金額の妥当性を考慮し、依頼先を選定することにより、不適切コンサルの餌食になる確率はぐっと減らすことができます。

 

2-3 建物劣化調査診断と仕様書・概算予算書の作成

建物劣化調査診断は、いつ大規模修繕工事を実施すべきかを判断することと、後述する見積もり依頼を行うために必要となる仕様書・概算予算書を作成するための重要な調査となります。

 

また、大規模修繕工事はその工事の規模、金額から言って、例えば「窓ガラスが割れたので新しいものに交換してください。」といったように簡単に見積もりを依頼できるものではありません。

そして、見積もりを依頼するには、次の観点が重要となります。

 

見積もり依頼の観点

☑どの範囲を?

☑どのような材料を使用し?

☑どのように仕上げるのか?

 

これらのことが決まっていないと、仮にA社とB社に見積もりを依頼しても、標準的な材料を使用して、範囲を狭くして1憶円の見積もりを提示したA社と、一方で、長持ちする材料で広範囲にわたる施工範囲で1憶2,000万円の見積もりを提示したB社がいた場合、どうするのか戸惑ってしまいます。

 

どちらを選ぶか、おそらく意見は分かれると思います。

このようなことが無いように、A社とB社を同じ土台で比較できるように、建物調査診断で建物の状況を正確に把握したうえで、上記観点が網羅された共通の仕様書の作成が重要となります。

 

2-4 大規模修繕工事の実施時期の決定

建物劣化調査診断の結果をもとに、いつを目安に大規模修繕工事を実施するかを決定します。

 

ココがポイント

このタイミングで決定した大規模修繕工事の実施時期から逆算して概ね1年前から修繕委員会の活動を開始します。

 

なお、部分的に劣化が進んでいると判断された箇所があれば、そこは応急的に修繕をし、大規模修繕工事のタイミングで抜本的に修繕を行います。

ここで実施時期が1年以上先であれば、修繕委員会の活動は休止します。

 

2-5 大規模修繕委員会の再結成

実施時期から逆算したスケジュールで修繕委員会を再結成します。

 

ココがおすすめ

以前はプライベートが忙しく参加できなかった方等を巻き込むことができるかもしれませんので、劣化診断当時の委員に加え、新たに委員を募集しても良いでしょう。

 

2-6 大規模修繕工事の工事範囲、仕様の決定

劣化診断時に作成した仕様書をベースに、大規模修繕工事でどこをどのように修繕したいのか、仕様書の内容を確定します。

 

ココがポイント

この時点で確定した仕様で必ずしも工事を実施する必要はなく、見積もり取得後、施工会社の提案や考えも反映し修正することにより、工事品質を高めることができます。

 

2-7 大規模修繕工事の施工会社の募集

作成した仕様書に基づき、施工候補会社に見積もりを依頼します。

見積もりを依頼する会社は区分所有者からの紹介、建通新聞やマンション管理新聞といった業界紙等を利用して公募するのが一般的です。

 

注意点!

不適切コンサルに関して、施工会社は公募しているから大丈夫と思われるかもしれませんが、経験豊富なコンサルタントほど、多くの現場で様々な工事会社と関わっています。

これまでの付き合いで、管理組合に提出する見積もりに自社へのバックマージンを上乗せするように指示をし、どこの会社に決まっても利益が見込めるように管理組合を誘導します。

 

特にココに注意

管理組合は工事会社の決定まで巧妙に誘導されることで、この実態にきづきません。

その結果、金額が安価で良い工事会社を選ぶことができたという錯覚に陥っていまいますので、施工会社の募集や選定の進め方には注意してください。

 

また、バックマージンの問題は、不適切コンサルだけでなくマンション内部にも潜んでいます。

様々な報道で理事長や修繕委員が、自身にバックマージンが入るように業者選定を誘導し、管理組合に不利益を及ぼしたということを見聞きされたことがあると思います。

 

管理組合役員や修繕委員は、本来なら自分たちの共有財産の価値を高めていく、維持していくために、プライベートの時間を費やして、活動されるはずです。

 

それが、「自分はこれだけ貢献したのだから一定のバックマージンをもらっても良い。その対価をいただいて当然である。」との考えから自身の行為を正当化し、自身の利益に走ります。

このような方には以下のような特徴があります。

 

自身の利益に走る方の特徴

☑自ら業者を紹介する。

☑特定の業者に肩入れをする。

☑自分に一番早く情報が入るようにする。

☑長年管理組合運営に関わっており、ご意見番のようになっている。

☑専門的知識をひけらかし、周囲の方が意見できない雰囲気を作り上げている。

 

このような問題を背景に、近年では標準管理規約に利益相反取引の防止に関する条文が規定されましたので参考にしてください。

 

標準管理規約 第37条の2

利益相反取引の防止

役員は、次に掲げる場合には、理事会において、

当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。

 

 

2-8 大規模修繕工事の施工会社の比較検討

見積書が提出されましたら、各社の見積もりを比較し、施工会社を決定します。

施工候補会社は以下のような手順で選定を進めます。

 

審査手順

☑一次審査:見積り前の書類審査(会社の規模、実績等から見積もりを依頼する会社を絞ります。)

☑二次審査:見積り審査(提出された見積りから代理人を伴ったプレゼンテーションを依頼する会社を絞ります。)

☑三次審査:プレゼンテーション審査(工事が始まったときに現場責任者となる代理人や会社の営業、工事部門の担当者等のプレゼンを受けます)

 

このプレゼン内容を踏まえ、新たな工事仕様に関する提案があるかもしれせん。良いと思うのであれば、その内容を反映することでより良い工事に繋がります。

 

施工会社を選ぶポイント

工事実績、財務内容、代理人、緊急時の連絡体制、工事期間中及び工事後の保証等を重点的に確認します。

 

 

注意点!

仕様を統一して見積りを依頼していますので、当然金額が安価な方が良いという考えに流されやすいですが、実は大規模修繕工事を成功させるための重要なポイントの一つに現場代理人の存在があります。

 

現場代理人は工事中に関係する多くの職人を統率する立場です。そして代理人と職人の繋がりで良い職人を手配できるかどうかも影響してきます。

つまり良くも悪くも代理人次第で出来栄えに影響が及びます。

 

また、工事中のトラブルも代理人が音頭を取って解決を図りますので、経験、人柄等を総合的に確認することをお勧めします。

実例として「マンションの近くに住んでいます。何かあったらすぐ駆けつけることができます。」と代理人が言ったことが決め手となったこともありました。

 

ただし、そういったエース代理人は工事会社が抱える工事において、大きな現場を任せることが多いため、小規模マンションの修繕といった場合には、あまり期待できません。

 

2-9 大規模修繕工事を実施するための総会決議

ここまで進めば、次のことを総会で決議します。

 

総会での決議事項

☑大規模修繕工事の仕様、実施時期と期間

☑大規模修繕工事の施工会社と発注金額(忘れず工事費の5~10%程度の予備費を計上しておく)

☑大規模修繕工事の監理会社と発注金額

☑運用している修繕積立金の取り崩し

 

注意点!

タイルの張り替えが想定より多く必要になるといった、工事を実施しなければわからないこともあります。

そのようなことのために、工事金額にプラスして5~10%程度、予備費を計上しておくことをお勧めします。

 

2-10 大規模修繕工事の工事開始前の住民向け説明会の開催

洗濯物をいつ干して良いかといった、工事期間中の生活の制限や注意事項について、工事会社による説明会が開催されます。

最近は大人向け、子供向けの説明会を開催することも一般的になっています。

 

生活にも影響しますし、工事が円滑に進むためにも積極的に参加しましょう。

 

注意点!

工事説明会の対象は居住者だけではありません。

工事費用は修繕積立金から支出されますので、マンションの外部に住む、区分所有者にも説明会の案内を行うとともに、区分所有者を通して、居住者である賃借人にも工事に協力するように連絡をしておいていただくと円滑に進みやすくなります。

 

2-11 大規模修繕工事の着工~完了

工事の実施が決まれば終了ではなく、工事が無事に完了して、修繕委員会は解散となります。

 

工事期間中は定例会を開催し、進め方、進捗状況、問題点を共有しながら進めることとなります。

特に工事を実施してわかる課題も出てきます。これらを一つ一つ解決し、満足度の高い工事となります。

 

 

3.大規模修繕工事を進めるうえで不適切コンサルに要注意!

2‐②の建物劣化調査診断会社の選定にあった不適切コンサルについて詳細を記載します。

2017年10月にNHKのクローズアップ現代+で、「追跡! マンション修繕工事の闇 狙われるあなたの積立金」という報道がありました。

これは国土交通省が発表した不適切コンサルの存在を追求した特集でした。

 

不適切コンサルは、国土交通省の発表では、設計コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託します。

 

その結果、管理組合に経済的な損失(実際には管理組合は気づいていない)を及ぼす事態のことを指すとしています。※国土交通省の報道・広報を参考にしてみてください。

 

大規模修繕工事の不適切コンサルの要点

難しい言葉が並んでいますが、要するに、大規模修繕工事を実施するときに、コンサルタントが管理組合からコンサルタント料を受け取るだけでなく、裏で自社が儲かるように管理組合に黙って、工事業者からバックマージンをもらうという問題です。

 

 

4.大規模修繕の工事会社が受け取る利益に対する考え方

大規模修繕工事の工事会社は慈善団体ではなく、会社を運営していくために一定の利益が必要です。

管理組合役員の中には、「工事会社が儲けてはいけない、利益を開示しろ」という方が一定数いらっしゃいます。

 

そのような話を見聞きする度に思うのが、「あなたはコンビニで物を買うときにその利益の開示を求めますか?」と聞いてみたいです。

さすがにトラブルの元になるので聞いたことはありませんが…

 

また、不思議なことに見積もりを出している会社に「あなたの見積金額が妥当ということを証明してほしい。」と言われる方もいます。

自分がやったことを正しいと客観的に説明することは非常に難しいです。できないと言い切ったほうがいいかもしれません。

 

こういった姿勢からも見積金額が安価であることが、仕事を受託できる最もわかりやすい方法だと思ってしまいます。

 

これらは役員でない区分所有者の方から「なぜその施工会社なのか?」、「価格は妥当なのか?」ということを追求されることを想定し発言される方もいるとは思いますが、お互い気持ち良く業務を発注、受託する関係ができあがってこそ、良い結果(仕事)に繋がります。

 

一人一人の考えが変わっていくことにより業界も変わります。

 

私の記事で不適切コンサルのみならずその存在を生み出してしまっている管理組合運営・社会的背景を少しでも認識いただき、問題を解決していくきっかけになれば幸いです。

 

 

まとめ 大規模修繕工事の進め方と注意点

大規模修繕工事は多額のお金が動くため、そこに利益だけを求めて寄ってくる人がいます。

しかし大規模修繕工事は資産価値を維持、向上させるために、区分所有者・住民のために行われるべきものです。

 

一人一人の意識が変わることで満足度の高い工事は実現できます。ぜひとも今回ご紹介しました進め方や注意点を参考に、積極的に大規模修繕工事の検討に関わってみてください。

きっと貴重な経験になります。

 

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