さて、本記事ではそのポイントとなる3つの条文をうっかりマンションの管理規約に反映してしまうと、管理組合、管理会社がともに大変になりますので内容を解説します。
こんな方におすすめ
- 標準管理規約にあわせて管理規約の変更を考えている方
- 標準管理規約を管理組合運営の実務面から理解したい方
1 マンション標準管理規約は必ずしも反映しなくていい
国土交通省は、マンション管理規約のひな型として標準管理規約を作成しています。
そのため、標準管理規約の記載に沿って、管理規約を変更しようとする管理組合は多いです。
しかし、標準管理規約はあくまでもひな型であり、必ずしも同じ内容にしなければならないというものではありません。(当然ながら法律に反する規定は反映しても無効です。)
本記事では、標準管理規約に沿って管理規約を変更することによって、管理組合や管理会社の負担が増え、管理業界関係者から嫌われる条文を管理組合運営の実務面からお伝えします。
なお、本記事での条文は全て標準管理規約がベースです。
反映すべきでない3つの条文
- 第41条(監事)
- 第42条(総会)
- 第58条(収支予算の作成及び変更)
2 標準管理規約41条と42条を解説 監事が臨時総会を開催した場合のポイント
第41条には「監事は管理組合の業務等に不正があるときには、臨時総会を招集できる」との規定があります。
また、第42条には「総会の議長は理事長が務める」との定めがあります。
このまま標準管理規約を当てはめてしまうと、監事が臨時総会を招集した時の議長は誰が務めるの?という疑問が残ります。
理事長が臨時総会を開催しないからこそ、監事が臨時総会を開催するわけで、そのような状況で理事長が議長を務めることが適切とは思いません。
むしろ理事長が務めるべきではないでしょう。
ここでは、第42条5項に「ただし、第41条3項に定める臨時総会の議長は、総会を招集した監事が務める」と規定しておくことが分かりやすく曖昧な余地を残さない方法だと考えます。
なお、標準管理規約のコメントにあるように、「総会において、議長を選任する旨の定め」をしておくことも一つの方法だと考えます。
標準管理規約 第41条
(監事)
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
標準管理規約 第42条
(総会)
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
5 総会の議長は、理事長が務める。
3 標準管理規約第42条を解説 通常総会の開催時期のポイント
第42条3項には「理事長は、新会計年度開始以後2か月以内に通常総会開催しなければならない」との規定があります。
以下の関連記事ではより詳細に記載していますが、この「2か月」以内の総会開催は、管理組合にも管理会社にも、とてもタイトな日程です。
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一度、管理組合役員を経験された方は大変さがわかると思いますが、事業年度が終了した後に決算資料をまとめ、総会資料の作成、総会の周知期間等を考えれば「新会計年度開始以後2か月以内」との記載は採用すべきでなく、多くの管理会社が標準と考えている「3か月以内」にすべきです。
ただ、時間があり余っている現役を引退され、管理組合活動に情熱を注いでいる方は2か月で十分という方が多いのが現状で、早くその意識が変わることを期待せずにはいられません。
こいういった方々は、なぜ2か月という期間を設けている標準管理規約合わさないのかという論法で発言をされます。
逆になぜ3か月ではだめか?と聞いても話になりません。
標準管理規約 第42条
(総会)
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。
4 標準管理規約58条を解説 会計年度開始後から総会承認までの収支予算のポイント
理事会は予算案で定められた範囲で必要経費の支出を行います。
しかし、管理組合の運営上、会計年度が終了した後、通常総会を開催し、そこで予算案が承認されるという流れの中では、どうしても会計年度終了から総会での予算案の承認までに、予算案が定められていない空白の期間が生じることになります。
標準管理規約ではこのことをカバーするために第58条に規定があるのですが、実はこの規定の中に、絶対にできないわけではないのですが、現実的には対応が難しい規定があります。
それは、「理事長は空白の期間に、必要経費の支出が必要となった場合には、理事会の承認を得てその支出ができる」という定めです。
よく考えてみてください。
小規模なマンションでは、毎月理事会を開催していないマンションが多くあります。
また、管理組合が支払うべき公共料金は必ず発生します。
このようなことをいちいち理事会で承認していては、実務上も大変ですし、必ずしも対応できるというものでもありません。
この規定は平成23年(2011年)の標準管理規約の改正から盛り込まれた条文ですが、規定を明確にしたがゆえに厳密には運営が難しく、理事会の柔軟性を奪ってしまう条文と考えます。
そのため、そのまま管理規約にあてはめるのは理事会運営の業務負担が増加し、もしこの承認を取っていなかった場合に厳しい区分所有者から指摘を受けることに繋がるだけです。
標準管理規約のコメントにもあるように、前年の会計年度における同経費の支出額のおよその範囲内であれば、理事長権限で、通常の業務の流れからその支出は認められる旨の規定で対応はできないものかと思ってしまいます。
まとめ マンション標準管理規約で反映してはいけない3つの条文の解説
標準管理規約をそのまま反映しない方が良い条文を3つ紹介しましたがいかがでしょうか。
共感いただいた方は、ご自宅の管理規約を確認してください。
そして、紹介しました観点が管理規約に反映されていないようであれば、今後の管理組合運営のために紹介した内容を参考にしていただけると幸いです。
また、これから標準管理規約に合わせて管理規約の変更を検討されている皆様におかれましては、ぜひともこれらの観点をもとに検討していただけると幸いです。
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