2019年10月12日の台風19号は日本各地に大きな被害をもたらしました。
その中でもタワーマンションの被害に関する報道として話題になったのが、神奈川県川崎市の武蔵小杉で、タワーマンションの地下電気室が浸水し、停電でエレベーターが使用できないといったことをはじめ、トイレが使えない、電気が付かないといったことでした。
この報道の中でワイドショーのコメンテーターが、マンションデベロッパーの責任を問うべきといったことや、マンション管理会社がダメであったといった発言を聞くたびに、「本当にそうなのか?」という気持ちが生まれ、うんざりしました。
さらにはコメンテーターが「水害保険はほとんどのマンションが加入しているはず」とコメントしていたことにはとても驚きました。
実際のところ多くのマンションでは水害保険には加入していません。(今後、武蔵小杉の教訓を機に確実に加入率は増加すると思いますが…)

台風後の多摩川
これは実際に多くの管理組合に携わった経験からの考えや実体験ですが、こういったことを実際の現場や事情を知らないコメンテーターが発信することで、デベロッパーや管理会社の社員が管理組合からどれだけ責められ、事情を説明することに苦労するか考えてほしいものです。
正直、武蔵小杉が発展著しい街ということで、住みたい街に住み、それがセレブや富の象徴であるタワーマンションが被害にあったということで、マイナスの方向に気持ちが動き、「嫉妬」という形になり、関心を引くことができるため、煽り報道が続いたと思います。
また、先日は某ビジネス番組で高経年マンションの特集をしていました。
その特集では築40年を超えるマンションが、今後、建て替えの道を進むべきか、大規模修繕工事を実施し、長くマンションを維持管理していくかといったことを報道していました。
その中でとても残念な紹介がありました。
内容は…「入居者で作る管理組合」という表現でした。
区分所有法や業界関係者であれば、これがなぜ残念か?ということがわかります。
そうです。管理組合は所有者(区分所有者)の集まりで、賃貸で入居している方は管理組合には所属していません。
このようなことを報道されると、普段から区分所有者と入居者の違いを、何度も繰り返し理事会等の場で説明している管理会社の社員は、嘘つき呼ばわりされることや報道に関して質問をする理事会や関係者に事情説明をすることでかなりの労力を要します。
働き方改革を報道するために特集を組んでいる番組を多く見かけますが、このような間違った情報が放送されることが、管理業界に携わる人にとって、どれだけ働き方改革を阻害しているか考えてほしいものです。
前後の文脈を無視して、部分だけを切り取り、偏った報道にするほうが視聴率を取ることができるかもしれませんが、今後、確実に顕在化してくるマンションの問題に関して、報道の姿勢を見直していただきたいと思います。
※私がたまたま見た番組の印象であり、多くの報道では正しいことを伝えていただいているかもしれませんが、感じたことを記載してみました。