マンション管理業界

マンションの寿命は何年?維持管理か建替えで悩む管理組合

マンションの寿命を知りたがる赤ちゃんの様子

マンションの高経年化に伴って、その寿命を気にする方が増えてきています。

高経年化の対策が3つある中、今回は維持管理か建替えに焦点をあてて、その答えを考えてみたいと思います。

高経年対策

①修繕を繰り返し維持管理を継続

②建替えを実施

③敷地売却で管理組合を解散

 

 

1.マンションの寿命は何年?

この質問は築30年を超えたあたりからマンションでよく出ます。

結論としては、「個々のマンションの状況によりけりで、断定することはできない。」と考えています。

 

よくRC造のマンションで47年ということを聞きますが、これは税法において減価償却期間を定めただけであり、47年=マンションの寿命ではありません。

実際100年持つコンクリートといったことは、大手ゼネコンが発表していますし…。

 

ここで築年数に関して、国土交通省が発表しているデータを確認すると、2018年(平成30年)末では6.3万戸が築50年以上で、5年後の2023年には42.3万戸が50年を超えるとのことです。

国土交通省 マンションに関する統計・データ等

 

マンションの寿命を47年と考えると5年後に向けて、まだ、建替え事例が243しかないにも関わらず、40万戸を超えるマンションが建て替え(解体)されるとは考えにくいですよね?

マンション建替えの実施状況

40万戸という数値は、マンション1棟で平均200戸あったとしても2,000の建て替え事例が必要な数字です。(現実的に実施できる数ではないでしょう)

それでは、マンション寿命を、様々な観点から考えてみます。

 

2.建替えができるという幻想

建替え事例は243ありますが、これは次の条件に恵まれたごく一部のマンションだけです。

 

建替えが成功する条件

・容積率に余裕があったもしくは容積率の緩和を受けることができた。

・容積率に余裕があり建替え後に戸数を増やすことで、その増えた部屋の売却益を建替え事業の収支に含めることができた。

・駅近や都心近くという立地であった。

 

特に容積率の関係から建替え後の戸数を増やし、その売却益で事業を成り立たすことにより、地権者の負担を軽減もしくはゼロにすることで成り立ってきた建替えがほとんどです。

この仕組みで地権者の負担を減らすことができなければ、高齢となった地権者たちが1,000~2,000万円といった建替えに伴う負担をすることは厳しく、建替え事業そのものが計画段階でとん挫することは明らかです。

 

ただでさえ、建替え工事期間中には、居住者(多くは高齢者)は一時的に慣れ親しんだマンションから引っ越しをする必要があります。

この負担に加えて金銭的な負担も強いられれば、「ほっておいてほしい。このマンションで最期を迎えさせてほしい。」という気持ちになることはわかります。

 

容積率とは?

敷地面積に対する建物の床面積の比率制限です。

容積率(%)は延べ床面積÷敷地面積×100で算出されます。

2階建ての戸建てを例に算出すると敷地面積が100㎡で1階の床面積が50㎡、2階の床面積が30㎡であれば、80%の容積率となります。

※地域によってこの容積率の上限が異なります。

 

3.維持管理で重要な位置づけの大規模修繕と配管交換

マンションの寿命を延ばすために大切なことが、日常の維持管理と計画的な修繕工事です。

特に重要となるのが、コンクリートや鉄部の寿命を延ばすためや雨漏りを防ぐために実施する建築系の大規模修繕工事と、給排水管からの漏水を防ぐために実施する設備系の配管工事です。

現状、築30年を超えているようなマンションには、維持管理の点で大きな2つの課題があります。

 

①修繕積立金を計画的に貯めることができていない

これは社会情勢も影響したことですが、修繕積立金の算出根拠となる長期修繕計画は、これらのマンションが建築された当時には一般的でありませんでした。

そのため、計画的な修繕が実施されず、当然、工事が必要な時期に修繕積立金が貯まっていないことにより、必要工事が実施されていないことが多くあります。

このことにより、結果として建物の劣化が進んでしまっています。

 

現在は、2008年に国土交通省が長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドラインを発表し、長期修繕計画に基づく資金計画の重要性が浸透し始めていますが、まだまだ、十分な修繕積立金が設定されていないといった課題は多いです。

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②給排水管の劣化

普段は目にすることの無い壁裏の配管

技術の発展に伴い、現在建築されるマンションでは、錆びずに交換が不要とされている材質の配管が使用されています。

しかし、築30年を超えるようなマンションでは鉄管で錆びる材質が使用されており、30年前後で交換が必要となります。

配管工事は大規模修繕工事と異なり、修繕の際には在宅調整や給排水規制といった住民の協力がとても重要な工事です。

 

給排水規制がかかるということは、お風呂もトイレも使用できないということです。

ただでさえ大掛かりな工事になるのですが、配管がコンクリートの中を通っていることで、さらに工事が実施しにくく、費用も多額にかかる場合があります。

そして、構造上の関係から配管工事ができない場合は、バイパスでの露出配管となる場合もあります。

 

4.購入時に重要視される耐震性

1981年の建築基準法施工令の改正により、1981(昭和56)年6月以降の建築確認のタイミングにおいて、新たな耐震基準が適用されることとなりました。

この新たな基準より以前に建設されたマンションも多く、新耐震基準を満たしていないマンションが多くあります。

そして、この耐震性への対策に関してはジレンマが生じます。

 

耐震診断を実施すると、不動産仲介会社は、その実施結果を購入希望者が現れたときに伝える必要があります。

なかには旧耐震基準となる前に建てられたマンションでも、新耐震基準を満たしている場合はあります。

しかし、それはあまり期待できる結果ではなく、耐震補強には多額の費用が必要なりますので、「診断をする」=「NGが出た場合、補強をする」という覚悟で診断をする必要があります。

 

なお、リニュアル仲介㈱が実施したマンションの耐震性に関するアンケート(回答:501名)では、マンション購入にあたり、76%が「立地が良くても、旧耐震基準のマンションは避ける」との回答でした。

特に年代別で、20代は100%、30代は81%と若い世代から旧耐震は避けられる傾向が顕著です。

つまり耐震性を満たすマンションにしなければ所有者・居住者の世代交代ができずスラム化する恐れがあるということです。

老朽化、スラム化が進んだマンションのイメージ写真

 

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新旧耐震基準

「旧耐震基準」:震度5程度の地震に関しては倒壊または崩壊しない耐震性を有する。

「新耐震基準」:震度6~7の大規模の地震動を受けても倒壊または崩壊しない耐震性を有する。※震度6~7(大規模の地震動)とは、阪神淡路大震災クラスの地震を指す。

 

5.まとめ 維持管理か建替えで悩む管理組合

これらのような背景を見たときに、マンションの寿命を「個々のマンションの状況によりけりで、断定することはできない。」と考えることはご理解いただけましたか?

個々のマンションの状況を考えたときに、中古で購入されなくなったとき、雨漏りが頻発し住める状況でなくなったとき、給排水や電気の供給ができなくなったときが寿命と言えると思います。

 

そして、修繕や建替えだけがこられの問題を解決する方法ではなく、敷地売却を行い、管理組合を解散するという方法も新たな選択肢になっています。

この記事がどのようにマンションの将来を考えていくかのきっかけになれば幸いです。

 

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