理事会の回数を減らしたい人も増やしたい人も、今回はデータと事例を基に、理事会の最適な開催頻度を考えるきっかけとなる内容を紹介します。
こんな悩みを解決したい
- 理事会の回数を増やしたい理事長や理事
- 理事会の回数を減らしたい理事長や理事
- 他マンションの理事会の開催数を知りたい方
1 マンション理事会の開催頻度を標準管理規約から読み解く
多くのマンション管理組合が管理規約を作成するときの参考にしている標準管理規約の規定から、1年間に開催が必要となる理事会はどのように解釈できるのでしょうか。
結論としては、1年間に開催が必要となる最小限の理事会の回数は年2回です。
- 通常総会に上程する議案を決める理事会
- 「理事」を通常総会で選任した後、理事長、副理事長等の役職を決定する理事会
この回数となる根拠は、標準管理規約第42条3項で「理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない」とされていることから逆算して考えることができます。
まず、同第54条第1項1号と4号では「収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案(1号)」、「その他の総会提出議案(4号)」は理事会で決議すると定められています。
次に、同第35条第2、3項では、「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する(2項)」、「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する(3項)」と定められています。
つまり、年に1回は通常総会を開催する必要があり、その通常総会に提案する議案は理事会を開催して決定しなければならないということです。
そして、「理事」を通常総会で選任した後、理事会で理事長、副理事長、会計担当理事の役職を決定します。
2 最も多いマンション理事会の開催頻度
国土交通省が実施したマンション総合調査(105、106ページ)の結果では、理事会の開催頻度はどのようになっているのでしょうか。
調査結果のデータ(1,670の管理組合からの回答結果)を読み解きます。
マンション総合調査の結果:理事会の開催頻度
- 月に1回:36.5%
- 2ケ月に1回:25.4%
- 3ヶ月に1回:24.3%
- 半年に1回:8.0%
3 マンション総合調査の結果からわかる理事会の開催頻度の傾向
マンション総合調査の結果からわかる傾向
- 築年数が古い方が理事会の開催頻度が多い
- 総戸数が多い方が理事会の開催頻度が多い
- 単棟型より団地型の方が理事会の開催頻度が多い
3-1 築年数が古い方が理事会の開催頻度が多い
築年数が古い方が「月に1回」開催しており、特に築40年前後では「月に1回」の開催は60%以上に達します。
これは「築年数が古い=年配者が多くなる」という傾向で考えればわかりやすく、管理組合活動に関心を持ち時間を割くことができ方が多くなるからです。
年齢層が低い(現役世代が多い)方が多い場合は管理組合活動への関心が低いといったことが如実に表れた結果です。
あえて良く言えば、年齢層が低い場合、効率的な理事会運営ができているとも考えることができる。(良く言いすぎでしょうか?)
3-2 総戸数が多い方が理事会の開催頻度が多い
総戸数が150戸を超えてくると90%が「月に1回」理事会を開催しています。
戸数が多ければ検討事項も多くなりがちなので、わかりやすい結果です。
3-3 単棟型より団地型の方が理事会の開催頻度が多い
単棟型では29.2%が「月に1回」の開催頻度ですが、団地型になると72.3%が「月に1回」理事会を開催しています。
団地型は戸数が多く、敷地が広いことが特徴で、権利形態が複雑(全体共用部分と棟共用部分)な場合があるので検討事項が多く、複雑になりがちなのでわかりやすい傾向です。
4 他マンションの理事会開催頻度の事例
多くのマンションで理事会の開催頻度は前期理事会の開催実績がベースとなります。
これは開催頻度を減らすと、「今年の理事会は怠けている」とご意見番からきつい指摘を受けやすいことや、無難に進めるためには前期踏襲とする方が良いからです。
理事長の意識が高い場合や、開催頻度を下げると管理会社が手を抜くとの考えから、あえて開催頻度を増やすこともありますが、これは稀なケースです。
このような管理会社の性悪説に立つことは構いませんが、役員のやる気や負担を考えたときには、安易に理事会の回数を増やす(もしくは維持する)のではなく、どのようにすれば効率的に運営できるのかという観点で、開催頻度を考えるべきでしょう。
それでは、他マンションの開催事例はどうなのでしょうか。
実例をもとに紹介します。
大規模修繕工事の前後や、修繕積立金の改定の検討が重なると、専門委員会の設立に伴い、理事会の開催頻度も多くなる傾向があります。
マンション特徴 | 理事会頻度 | その他 |
大型団地 築40年 1,000戸 | 月に1回 事前打ち合わせ無し | 理事会以外に、毎月「修繕、会計、総務委員会を開催」 |
複合タワー 築5年 500戸 | 月に1回 理事長、副理事長により理事会1週間前に事前打ち合わせ | 全体理事会(3ヶ月に1回)、商業部会(月に1回)の開催あり。 |
タワー 築5年 200戸 | 月に1回 事前打ち合わせは理事会当日の直前 | お盆の時期(8月)やクリスマスイベントの開催がある12月は中止 |
標準タイプ 築10年 60戸 | 2ケ月に1回 事前打ち合わせ無し |
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小規模 築15年 20戸 | 3ヶ月に1回 事前打ち合わせ無し |
|
※いずれも総会前月、翌月は開催することで回数やタイミングを調整。
5 マンション理事会の開催頻度を減らす場合の注意点
理事会の開催頻度は、開催のタイミングと決議事項さえ守れば、減らすことができます。
しかし、理事会で検討すべき案件(クレーム)が出たときにタイムリーな検討ができないといったことや、管理会社からの報告事項を確認する機会が減るといったデメリットがあります。
このようなデメリットを少しでも減らすために、日常の報告あり方について事前に合意しておくことをお勧めします。
理事会の開催頻度を減らすための工夫
必要な時には緊急で理事会を開催することの合意や、理事会は開催しなくても管理会社からの報告資料を役員で回覧し、理事会役員と管理会社の間でやりとりができる仕組みを導入しておくと良いでしょう。
なお、なかなか判断ができない管理規約違反や管理費等の滞納に関して、理事会の対応をまとめていますので、これらのことが懸案事項となっているマンションでは参考にしてみてください。
まとめ 最適なマンション理事会の開催頻度
本記事のまとめ
- マンション理事会の開催頻度を標準管理規約から読み解く
- 最も多いマンション理事会の開催頻度
- マンション総合調査の結果からわかる理事会の開催頻度の傾向
- 他マンションの理事会開催頻度の事例
- マンション理事会の開催頻度を減らす場合の注意点
管理会社のホンネとして理事会の開催頻度は減らしてほしいと思っているでしょうし、働き方改革が叫ばれる中では、開催時間も短くしてほしいでしょう。
これは「管理がしっかりされているのであれば」という前提において、理事会役員も同じ考えだと思います。
理事会の開催頻度、時間の削減は、理事会役員と管理会社の双方が協力し合う仕組みを作り上げることで、実現できます。
今回紹介しましたデータや事例を参考に、あなたのマンション管理組合に合った理事会運営の実現に役立てば幸いです。
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