【解決したい悩み】
- スムーズに修繕積立金の値上げをしたい
- 修繕積立金を値上げするためのアンケートに記載するポイントを知りたい
- 長期修繕計画書の理解を深めたい
修繕積立金が足りないとわかっていてもどのように進めればいいか悩んでいませんか?
多くのマンションでは修繕積立金が足りないことはわかっていながら、実際には必要な値上げをしていません。
本記事では、修繕積立金を値上げするというゴールに向かうときに必要となる手順の一つである、アンケートの実施に必要な5つのポイントを紹介します。
5分程度で読むことがますので、最後までお読みいただけると幸いです。
1 修繕積立金を値上げするのにアンケート(説明会)は必要か?
結論としては絶対に必要な手続きではありません。
実際に修繕積立金を値上げするときには、標準管理規約に倣って総会の普通決議で値上げが可能な場合には、委任状と議決権行使書で可決されることが大半です。
正直なところ、アンケートや説明会を実施する目的の一つに、修繕積立金の値上げを阻止しようと声を大にして騒ぐ人を抑え込むためということがあります。
そのために労力をかけるのか…と思うかもしれませんが、それが管理組合運営の実態であり、合意形成を得るためのプロセスなのです。
本質としては、長期修繕計画の役割や資金計画を理解し、適切な時期での修繕の必要性を予め合意しておくということが重要ですが、そこにたどり着くまでに貴重な時間を費やすことになります。
一日も早く修繕積立金は値上げした方が良いため、あえてネガティブな側面からお伝えしています。
2 修繕積立金の値上げに重要な役割を持つ長期修繕計画
アンケートで伝える内容は大きく2つあります。
- 「長期修繕計画の役割」
- 「修繕積立金の値上げ幅」
ここでなぜ長期修繕計画?と思われる方がいるかもしれませんが、修繕積立金の値上げ幅を決定するための重要な根拠となるからです。
国土交通省が発表している長期修繕計画作成のガイドラインでは、長期修繕計画が持つ目的として次のことが示されており、修繕積立金の額の根拠を明確にするとあります。
単純に修繕積立金が足りないと言われても、「いくら足りないの?」、「いつ頃、足りなくなるの?」ということが説明できなければ、値上げ幅を決めることができません。
そのために長期修繕計画を参考にしてどれくらいの修繕積立金が必要となるかを判断します。
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3 修繕積立金を値上げするためのアンケートを作成するための5つの要素
紹介する5つの要素をもとにアンケートを作成することで、現状の理解も深まるだけでなく、将来に向けた重要な要素も理解することができます。
アンケート作成の5つのポイント
- 修繕積立金に関する変更や検討経緯を伝える
- 長期修繕計画の役割と作成方法を伝える
- 長期修繕計画は今後も見直していく必要があることを伝える
- 長期修繕計画に基づく修繕積立金計画の役割を伝える
- 理事会が考える今後の修繕積立金計画を伝える
3-1 修繕積立金に関する変更や検討経緯を伝える
例えば初めての値上げであれば、マンションが分譲されたときの資金計画がどのような計画(一般的な計画は段階増額方式)であったかということを伝えます。
また、2回目、3回目や築30年を超えるような高経年のマンションでは、これまでの改定の経緯を伝えます。
ここで、必ずと言っていいほど、修繕積立金を値上げすると聞くと、マンションを購入する時に修繕積立金が上がるとは聞いていないといったことや、以前に値上げしたときにはこのままで大丈夫という説明だったと言い出す人がいますので、気にせず、事実だけを淡々と伝えます。
値上げの先送りを正当化する意見
これまで値上げせずにやってこれたように理事会役員ががんばるべきとの考えを示す人がいますが、このようなケースの大半は問題を先送りしてきただけです。
3-2 長期修繕計画の役割と作成方法を伝える
長期修繕計画の作成の目的、つまり役割を記載します。
このパートでは、マンションは一軒家とは異なり、自分一人の判断で修繕が決定できるものではなく、各所有者の意志を反映させながら決定していく必要性を伝えます。
また、共用部分の修繕は、専有部分や自分が見ている範囲のみ(普段通っている共用廊下など)しか、自分には関係の無いことと思ってしまう人が多く、普段見ていない部分(屋上、集会室、給水ポンプなど)も修繕をしなければならないということを伝えます。
ここで反対派が最も突っ込む意見が出ます。
「長期修繕計画に記載されている金額と修繕工事の設定年数の根拠が正しいことを示してほしい」
反対派は、例えば12年周期で大規模修繕工事を設定していた場合、前に住んでいたマンションでは15年で工事を実施したということや、近隣マンションでは14年で実施したといった情報をもとに反対や計画の見直しを主張します。
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さらにまだ実施したことのない工事であれば、記載されている金額の根拠を指摘します。
この時点ではどこまでいっても結論は出ません。
理事会のスタンスとしては「長期修繕計画作成ガイドライン」、「マンションでの過去実績」、「メーカー、管理会社、設計会社の助言」などに基づき、総合的に判断しているといったことまでしか伝えることができません。
もし違うスタンスに立つとすれば、かなり強引な理事会(もしくは専門委員会)の都合の良い理由を基に理由付けが行われますので、そのようにならないようにする必要があります。
3-3 長期修繕計画は今後も見直していく必要があることを伝える
長期修繕計画はマンションで工事実績が積み上がることや「社会的劣化」、「高度情報化」といったことを背景に、概ね5年毎に定期的に見直していく必要があります。
また、当然ながら工事項目が増えれば、必要となる修繕積立金は増加します。
そのため、今回の値上げはあくまでも現時点の長期修繕計画に基づく資金計画をベースとした値上げであることを強調しておきます。
3-4 長期修繕計画に基づく修繕積立金計画の役割を伝える
長期修繕計画に基づき概算の修繕費用を算出し、各区分所有者が毎月どれくらいの修繕積立金を負担すべきかをということを算出した計画が資金計画です。
一時金をあてにした修繕積立金計画は、本当にそのタイミングで多額の費用を全区分所有者が支払えるのか?という危険性を持っています。
また、資金が足りないといって適切な修繕の時期を逃すことは、結果として多額の修繕費用が必要となったり、居住者にとって漏水といった日常生活に関わる不便に繋がったりもします。
これらに加えて、少しでも早い時期に値上げをする(負担を平準化)重要性も伝えます。
修繕積立金の負担の平準化の重要性
100戸のマンションで毎月各戸平均1万円を積み立てる場合、年間で1,200万円、10年間で1億2,000万円が積み立てられます。
一方で毎月各戸平均15,000円を積み立てた場合、10年間で1億8,000万円が積み立てることができます。
この差は6,000万円です。
もし一時金で徴収しようとした場合、一部屋あたり60万円を一括で徴収する必要性がありますので、これが少しでも早く修繕積立金を値上げすべきと言われている所以です。
※一律に60万円の徴収ではなく、専有面積に応じて徴収額が算出されることが一般的です。
3-5 理事会が考える今後の修繕積立金計画を伝える
ここまでの説明を経て、ようやく修繕積立金の値上げ案を提示します。
人の心理として、多くの人は真ん中の資金計画を選びがちなので、値上げ案は理事会が決定したい案を真ん中にして3つ用意します。
3つの資金計画は次のような基準をもとに立案します。
修繕積立金の値上げ案の作成根拠
- 分譲時に事業主が提示していた値上げ案
- 均等積立方式に基づく値上げ案
- 第●回目の大規模修繕工事を不足なく実施できる値上げ案
修繕積立金の値上げのタイミング
多いのは竣工から5年前後と1回目の大規模修繕工事を実施したタイミングです。
4 修繕積立金の値上げに関するアンケート後にはフィードバックを実施
アンケートを実施した後、必要となるのが結果報告です。
アンケートの中にいつ、どのような形で結果報告を行うかを記載しておくことが重要です。
結果報告は書面、説明会のどちらでもかまいませんが、単純な賛成、反対の集計だけでなく、寄せられた意見に対しての理事会の考えも示します。
できればQ&A方式が理想です。(Q&A方式の見せ方は以下の表を参考にしてください。)
ここまでやっておくことで、総会で反対派が声を大にして反対しても、理事会の真摯な向き合い方は外堀を埋めた状態のため、総会はほぼ乗り切れます。
ご意見・ご質問 | 回答(理事会の考え) | |
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まとめ 修繕積立金を値上げするアンケートの5つの要素
本記事のまとめ
- 修繕積立金を値上げするのにアンケート(説明会)は必要か?
- 修繕積立金の値上げに重要な役割を持つ長期修繕計画
- 修繕積立金を値上げするためのアンケートを作成するための5つの要素
- 修繕積立金の値上げに関するアンケート後にはフィードバックを必ず実施
多くの方が手を付けたくないものの、重要な修繕積立金の値上げを実施して、周囲から責められることは辛いものです。
しかし、誰かがやらなければ将来的に修繕積立金が不足することはわかりきっています。
この事実に気づき、危機感を持った方が着実に手順を踏みながら、値上げの検討を進めることで目的は達成できます。
今回、紹介したことが少しでも皆様の参考になれば幸いです。
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