あなたがお住いのマンションで、宅配や引っ越し業者が付けたと思われる傷や、台風で飛来物がありエントランスのガラスが割れたといったときの費用はどうしますか?
このような被害を補償するためにマンション管理組合は保険に加入します。
本記事では、管理組合がマンション向けの総合保険に加入するときに比較すべき保険の種類やポイントをまとめてみました。
こんな方におすすめ
- マンション管理組合が加入する保険の更新時期を迎えている理事長・理事役員
- マンション管理組合が加入できる保険内容を知りたい・見直したい方
- マンション管理組合が加入している保険の保険料を安く抑えたい方
1 マンション管理組合は保険に加入すべき
個人が所有、住んでいる部屋、つまり専有部分は個人の責任で火災保険に加入し、突発的な被害に備えています。
この保険を利用し、専有部分で火災が発生した時や漏水被害を受けた時にはその被害を補償します。
では、共用部分が突発的な被害を受けた場合の被害補償はどうなるのでしょうか?
さらには共用部分の不具合(共用部分の排水管から専有部分に水漏れ)が原因で他者に損害を与えてしまった場合はどうでしょうか?
このような時に「マンションが受けた被害、与えた被害」を補償するために、マンション管理組合として損害保険に加入しておく必要があります。
管理組合が加入する保険の名称
マンション管理組合が加入する保険は、一般的には「マンション総合保険」と言われます。
2 マンション管理組合に加入をおすすめする保険の種類
各保険の種類を紹介するとともに、加入推奨レベルを☆の数で表現します。
マンション保険の種類
- 火災保険
- 施設賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
- 水害保険
- 電気的・機械的事故保険
- 地震保険
2-1 火災保険
この保険が全てのベースとなり、特約という形でその他の保険を付保することができます。
主な補償内容
火災、台風等により破損、汚損した共用部分の被害を補償。
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2-2 施設賠償責任保険
共用部分が原因となり他者の身体、財産に被害を与えてしまった時に活用します。
この保険はマンションの築年数が経過すればするほど、設備に不具合が起こりやすくなりますので、重要になる補償です。
主な補償内容
例(1)外壁のタイルが落下し、通行人にあたりケガをさせてしまった時の被害を補償。
例(2)共用部分の排水管から水漏れがあり、特定の部屋(専有部分)のボードやクロスに漏水被害が発生したときの被害を補償。
2-3 個人賠償責任保険
個人の行為や財産が原因で、他者の身体、財産に被害を与えてしまった時に活用します。
「マンション管理組合として加入すべき保険か?」という観点はよく議論になりますので、管理組合で一括で加入することをお勧めしますが、保険への加入推奨は☆5つからワンランク落としています。
「個人が加入すべきではないか?」もしくは「個人で加入している人が多いのではないか?」と思われるかもしれませんが、マンションをローンで購入していない方や、既にローンを支払い終わった方など、専有部分の火災保険に加入していない方は意外といます。
そのため、漏水の加害者(上階)となった人が保険に加入しておらず、損害請求に対応できない(そもそもお金が無くて支払えない等)、もしくは自分は悪くないと開き直り支払いを拒むケースがあることから、管理組合で一括加入しておくケースが大半です。
なお、各個人が加入している個人賠償責任保険と重なり二重保険になるのではないかとの考えもありますが、完全に二重というわけではありません。
免責額の上限の範囲で、例えば2,000万円の被害が発生したとき、個人では1,000万円、管理組合でも1,000万円を上限とした保険に加入していた時には、それぞれを適用して、合計2,000万円の補償を適用することが可能です。
主な補償内容
上階の専有部分の給水管から漏水し、下階の部屋のボードやクロスに漏水被害が発生したときの被害を補償。
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2-4 水害保険
各行政が発行するハザードマップ等を参考に付保します。
最近はこれまでになかった水害被害が増えてきていますので、加入する管理組合は増える傾向にあります。
ただし、立地条件や建物の構造にも左右されますので、強く推奨する保険というわけではありません。
主な補償内容
大雨による洪水や土砂崩れにより床上浸水し、建物の共用部分が受けた被害を補償。
2-5 電気的・機械的事故保険
エレベーター・機械式駐車場等の建物付属機械設備の電気的・機械的事故(故障)による損害を補償します。
加入している管理組合はほとんどなく、適用された事例をあまり聞いたことがありません。
主な補償内容
機械式駐車場やエレベーターを作動させたときに、基盤や配線等に異常点火して機器が焼き付いて故障した場合の被害を補償。
2-6 地震保険
国が加入を推奨しています。
地震保険は各保険会社が提供しているものではなく、国が取りまとめており、どの保険会社で加入しても補償内容、保険料は同じです。
地震で被った被害を元に戻すというより、被災した時に今後の生活を立て直すための生活資金という位置づけが強いものです。
なお、マンション管理組合として加入する場合、主契約の火災保険料と比べても割高に見えますが、住戸平均で割り戻せば月々数百円のため、私としては加入をお勧めします。
主な補償内容
火災保険の主契約をベースに、建物主要構造にどれだけの被害があったかによって、全損・大半損・小半損・一部損の固定した4段階にて認定されます。
3 マンション管理組合に比較をおすすめする保険内容の5つのポイント
保険加入の5つの比較ポイント
- 主契約(火災保険)の付保割合は過剰でないか?
- 1年ではなく複数年の長期契約で加入する
- 保険金が支払われる際の免責額を比較する
- 保険事故時の臨時費用の算出割合を比較する
- 水漏れ原因調査の保険認定回数や支払い上限を比較する
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新たな比較ポイントとなる、過去の保険金の支払い実績から保険料が調整される制度が導入されていますので注意が必要です。
3-1 主契約(火災保険)の付保割合は過剰でないか?
保険料を算出するうえでベースとなるのが、付保割合と呼ばれる、いくらまで補償するのかという上限設定するための数値です。
端的に言ってしまえば、建物(共用部分)を再度建て直す(再調達価格)場合にいくら必要となり、その金額に対していくらまでを保険で補償しますかという割合です。
付保割合の考え方
再調達価格が10億円のマンションがあるとした場合、付保割合を70%にすれば7憶円、50%にすれば5憶円の被害が補償上限となりますが、1事故で5憶円の被害が出るような事故が想定されないと判断すれば、この付保割合を減らすことで保険料のベースを下げることができます。
※地震保険は主契約の最大50%までしか加入できませんので、地震保険の加入を考えている場合は、このバランスも考える必要があります。
3-2 1年ではなく複数年の長期契約で保険に加入する
保険は長期契約にすればするほど割安になります。
建っているマンションは年々老朽化が進みますので、保険会社にとっては、漏水等で補償しなければならない被害が増える一方です。
そのような背景から、毎年のように見直し(改悪)されており、条件が良くなることはあまり考えられません。
できる限り加入できるタイミングでの長期契約をお勧めします。
保険の長期契約のメリット
5年契約であれば1年契約を5回繰り返した場合の4.5倍~4.7倍ほどの保険料で済みます。また、長期契約で加入すればその期間は加入時の条件が適用されます。
3-3 保険金が支払われる際の免責額を比較する
1事故の免責額が1万円と5万円では持つ意味が大きく異なります。
例えば10万円の補修を必要とする保険事故があった場合の免責金額の違いによって受け取ることができる保険金の違いを紹介します。
免責金額による違い
☑免責1万円では、10万円-1万円(免責額)=9万円の保険金を受け取ることができます。
☑免責5万円では、10万円-5万円(免責額)=5万円の保険金となります。
差は4万円となり、保険加入期間に保険事故があればあるほど、影響は大きくなります。
3-4 保険事故時の臨時費用の算出割合を比較する
この費用は、事故があった時に事故の拡大防止や一次対応等で何かしらの負担が発生すると想定し、各事故が発生する都度、一定の割合で保険金に上乗せされます。
例えば10万円の補修を必要とする保険事故があった場合の臨時費用の算出割合の違いによって受け取ることができる保険金の違いを紹介します。
臨時費用の算出割合による違い
☑算出割合が10%では、10万円×10%=1万円(臨時費用)が上乗せされるので、受け取ることができる保険金は10万円(補修費用)+1万円(臨時費用)=11万円となります。
☑算出割合が30%では、10万円×30%=3万円(臨時費用)が上乗せされるので、受け取ることができる保険金は10万円(補修費用)+3万円(臨時費用)=13万円となります。
つまり大きな金額の事故があれば、さらに大きく受け取ることができる保険金が異なってきます。
3-5 水濡れ原因調査の保険認定回数や支払い上限を比較する
マンションでは各部屋の壁や床下に給排水配管(枝管)が通っています。
基本的にはこれらの配管は、専有部分扱いとなっており、築年数が経てば老朽化し、知らないうちに下階に漏水することがあります。
専有部分からの漏水の場合、多くはまず上階を確認しますが、ボードの裏等は、ボードを開口しないと原因箇所の特定ができません。
そうなったときに漏水を疑われた上階としては、その復旧費用の負担に関し、トラブルになることがあります。
このような時のために、原因を調査する費用(開口部を設置し、開口部を元に戻すまでの復旧含む※漏水箇所の復旧は含まない)を管理組合の保険で補償するものです。
なお、各保険会社では、年間の限度額や適用回数を決めています。
築年数や過去のマンションでの適用事例を確認し、その他の条件とのバランスを考慮する必要があります。
まとめ マンション管理組合が保険に加入する際に比較をおすすめする5つのポイント
本記事のまとめ
- マンション管理組合は保険に加入すべき
- マンション管理組合に加入をおすすめする保険の種類
- マンション管理組合比較をおすすめる保険内容の5つのポイント
保険は単純な損得というより、何かあったときのための安心をお金で買うという側面が強いです。
内容は複雑ですし、わかりにくい点も多々ありますが、今回の記事を参考にしていただければ大きく判断を誤ることはないと思います。
各自で保険内容を理解し、全体のバランスを考えて必要な保険に加入する際にお役に立つことができれば幸いです。
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