分譲マンションでは、ペットの飼育ができる場合と禁止されている場合があります。
多くは分譲のときに定められた管理規約等(規約ではなく細則の場合が多い)にルールが記載されています。
しかし、近年ではペットは家族であるとの考え方が一般化してきており、この10年ほどで建設されたマンションでは小型犬等を中心に飼育は認められていますが、飼育が禁止されているマンションで、ルールに違反して飼育をしている人が増えています。
当然ながらルール違反者は管理組合としては問題視することになります。
本記事ではマンションでのペット飼育に関するトラブルやその解決策をまとめてみました。
こんな方におすすめ
- ペットの飼育トラブルを抱えている管理組合の理事長・役員
- マンションでペットの飼育マナーに悩まされている方
- ペットの飼育が禁止されているマンションでルールの違反者に悩んでいる方
1 マンションでのペット飼育が禁止されている割合
国土交通省が2018年に実施したマンション総合調査(約1,700組合が回答)のペット飼育の禁止に関する調査結果は次のような割合でした。
この結果からも、近年におけるペット飼育の考え方が変わってきているのは明らかです。
なお、マンションの竣工年代別に限れば、2009年(平成22年)以降に竣工したマンションの約90%が種類、サイズ等を限定することで飼育を認めています。
マンション総合調査結果
ペットの飼育は禁止:40.3%
種類、サイズ等を限定しペットの飼育を認めている:49.3%
2 ペット飼育はトラブルのもと?マンションで飼育が禁止されてきた理由
近年ではサイズ等の制限はあるものの、マンションでのペットの飼育は一般的なものになってきました。
それではなぜ、これまでペットの飼育が禁止されてきたのでしょうか。
実際にマンションで起きているトラブルを参考に、理由を挙げてみます。
ペット飼育に関するトラブル原因
- 人に危害を加える恐れがある(噛みつく・ひっかく)
- 鳴き声が近所迷惑になる(特に飼い主の不在時に吠える)
- 臭いが気になる(ペットを清潔にしていない・独特の臭いがする)
- 動物アレルギーの人がいる(エレベーターに同乗することができない・洗濯物や網戸に毛が付着する)
- 共用部分を汚損する(糞尿・バルコニーの排水溝に毛が詰まる)
3 ペット飼育のトラブルを防ぐためのマンション管理規約
ペットの飼育ができるマンションでは、トラブルを回避できるように、管理規約等に一定のルールを定めることによって、飼育を認めています。
それぞれのトラブルの対策を紹介します。
ペット飼育のトラブル原因
- 人に危害を与えてしまう
- 泣き声が近所迷惑になる
- 臭いが気になる
- 動物アレルギー
- 共用部分の汚損
3-1 トラブル防止のための管理規約 人に危害を加えさせない
小型犬や猫といった室内で飼育できるようなペットを想定し、種類やサイズを限定し、共用部分ではリードに繋いだうえでゲージに入れる。
また、犬の場合は狂犬病の予防接種を行い、証明書を犬に携帯させる。
3-2 トラブル防止のための管理規約 鳴き声で近所に迷惑をかけない
ペットの種類やサイズを限定しておく。
ひどい場合には飼育舎者負担とし、管理組合が調教師を指定をして調教をする。
ポイント
飼育者が日中不在のときに犬は吠える傾向があります。近隣の方が日中の鳴き声に悩んでいても、飼育者は鳴き声を聞いていないので温度差が生じることがあります。
3-3 トラブル防止のための管理規約 臭いを防ぐ
飼育は専有部分に限定し、共用部分は当然のことながら、バルコニー等の専用使用部分に出すことを認めない。
3-4 トラブル防止のための管理規約 動物アレルギーの人に配慮する
エレベーターで他に人がいる場合は同乗しないこととする。もしくは同乗者に断ってから乗ることとする。
また、ペットの足洗い場を設置して、苦手な人が極力近づかないで済むように導線を工夫する。
ポイント
新築マンションでは標準機能ですが、築30年ほどのマンションでは、エレベーターのリニューアルの時にはペットが同乗していることを知らせるために表示ボタンの機能を追加することをおすすめします。
3-5 トラブル防止のための管理規約 共用部分を汚損させない
共用部分ではケージ等に入れてることを徹底し、歩かせることを禁止する。
バルコニーに出すことを禁止する。
4 ペット飼育禁止マンションの違反者に対する管理組合の対応
実例を参考にペットの飼育が禁止されているマンション管理組合が管理規約等を遵守させるために取った手順を紹介します。
step
1管理組合が違反者に直接もしくは書面で、ペットを飼育しているのかを確認します。
step
2飼育していることを認めた場合、期日を区切り、その期日までに管理規約等を遵守した状況にしなさいという注意勧告を行います。
注意勧告の内容
ペットは家族であり命ある生き物のため、このような遠回しな表現ですが、言っていることは、「ペットを手放すか」、「引っ越しをしてください」ということです。
step
3それでもペットの飼育を止めない場合、管理組合は法的措置を講じます。
この段階では違反者によるペットの飼育が、実際に他の人に迷惑をかけているかどうかは問題ではありません。
管理組合としては、ペットの飼育が禁止されているマンションで、ペットを飼育していること自体が管理規約等の違反であり、「管理規約等を遵守しなさい」という主張と法的観点では、違反者は管理規約等を遵守するしかありません。
当該マンションでは、ペットを飼育していた方が、過去に管理組合から注意を受け、ペットを手放したという事例がありました。
このような場合、管理組合は前例を考慮した判断をする必要があります。
一方で難しいのが社会の流れです。
管理組合の中という限られたコミュニティの前例で判断するのか、社会の流れという大きな観点から判断するのか、ペット飼育に向き合う姿勢はどんどん難しくなっています。
今回紹介した手順は、正攻法で手続きを進める管理組合です。
違反者は管理組合からいきなり訴えられた場合でも、「厳しい措置だ」、「対応が冷たい」と言い返すことができる状況でないことを忘れてはいけません。
なお、ペットは生き物ですが、法的観点で言えば「物」として扱われてしまうので、ペットに愛着のある方は、辛いやり取りをしなければなりません。
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5 飼育禁止マンションで違反者がいる場合にトラブルを解決する方法
近年のペットに対する考え方の変化や、飼育が禁止されている中でも飼育されているペットがいるという現状の落としどころとして、「現状の一代に限って飼育を認める」という方法です。
これは、「ペットの飼育が禁止されているから入居した」、「ペットアレルギーだからペットの飼育は認めたくない」という反対派の人たちと、そうは言ってもペットは生き物であり、あまり強硬な手段は取りたくないという考えから、管理組合が事態収拾を図る苦肉の策です。
しかし、一代限りのはずが、いつの間にか「ペットが若返った」、「色合いが変わった」、「こんなにペットって長生きしたっけ」というような意見が聞こえ始めます。
ココに注意
「一代限りの飼育」を認めると、なし崩し的にペットは増加します。そのため、結局のところ、飼育を許可したことと同じ状態となります。
なお、竣工からペットの飼育ができるマンションと禁止されているマンションの違いとしては、「ペット専用の足洗い場がある」、「エレベーターにペット同乗のボタンがある」といった設備上の違いがあります。
エレベーターであれば、30年に一度の更新の時期と重なれば対応ができますが、これらの設備を後付けで設置することは難しいのが現状です。
まとめ マンションでのペットの飼育トラブルを解決する方法
本記事のまとめ
- マンションでのペット飼育が禁止されている割合
- ペット飼育はトラブルのもと?マンションで飼育が禁止されてきた理由は?
- ペット飼育のトラブルを防ぐための管理規約
- ペット飼育禁止マンションの違反者に対する管理組合の対応
- ペット飼育禁止マンションで違反者がいる場合にトラブルを解決する方法
表面的なペットの飼育に関して記載してきましたが、盲導犬等は別枠で飼育を認めているマンションが大半です。
また、多くの場合、犬、猫を想定してサイズや種類に制限を加えていますが、うさぎやハムスターはどういう扱いにするのかといったことも明確にしておかないとトラブルの元になります。
時代背景からすれば、ペットの飼育はどんどん認められている方向は間違いありません。
もし、あなたが飼育が禁止されているマンションにお住まいで、飼育をしたい場合には、管理規約に違反して飼育を開始することはやめてください。
家族同様の大切なペットのために、まずは管理規約等を変更する動きをとってから飼育を開始することをお勧めします。
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