あなたがマンション管理組合役員に選ばれていて、理事会で急遽、役員を辞めたいという人が出たらどのように対応しますか?
この記事では、管理組合と理事役員の関係、辞任や後任を選任することについて、前もって管理規約を変更しておくことの重要性をお伝えします。
こんな方におすすめ
- マンションの理事役員の辞任に備えて前もって対策をとっておきたい方
- マンションの理事長や理事役員で、急遽理事役員を辞めたいという人が出て悩んでいる方
1 マンション管理組合の理事役員は辞任できるのか?
管理組合役員(理事・監事)の管理組合との関係は、委任契約であると解されています。
民法651条では、この委任契約について、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と規定しており、いつでも契約を解除することができ、さらには、解除のための特段の理由も必要ありません。
つまり、管理組合役員はいつでも辞任できるということです。
2 マンションの理事長が知っておくべき理事役員の辞任後の対応
役員が辞任した場合、理事会はどのように対応すべきでしょうか?
標準管理規約第36条第3項では、「任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。」との定めがあります。
それでは、後任の役員はどのように選任すべきでしょうか?
同条第2項には「補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。」との定めがありますので、補欠の役員を選任すれば良いだけと考えてしまいますが、多くの管理組合では補欠役員を選任していません。
このような状況において、同条第4項の規定のように、役員が所有している住戸を売却し、組合員(所有者)でなくなった場合は、そもそも役員資格すらなくなります。
こうなると後任の選任については、標準管理規約第35条2項の規定に基づき、総会で選任する必要が出てきます。
しかし、役員が辞任した都度、総会を開催しているようでは円滑な理事会運営の妨げになりますし、人間関係のトラブルで役員の辞任にまで発展した場合、さらにややこしいことになりますので、役員の辞任を想定し、予め管理規約を変更しておくことをお勧めします。
標準管理規約35条及び36条抜粋
第35条(役員)
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
第36条(役員の任期)
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。
3 マンション管理組合の理事役員の辞任に備えた後任の選任方法の規定
標準管理規約第36条関係のコメントには、次のような記載があります。
「③役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合、補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。」
そのコメントを参考に、役員に辞任等により欠員が生じた場合に備え、管理規約第35条の一部を、「後任の役員は理事会決議により決定できる旨の規定」を定めることにより、理事会決議で後任を決定することができ、円滑な理事会運営が可能となります。
なお、理事と監事を総会で分けて選任する性質上から、理事は理事会で、監事は総会で選任するように明確に分けて記載しておく方法も一案です。
※役員の人数を規定している場合には、辞任によりその条文に抵触しないか注意が必要です。
下線・太字が変更箇所
第35条(役員)
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
ただし、任期途中で役員に欠員が生じた場合、この補充をする場合は、役員は第51条に定める理事会で、補充もしくは補充をしないことを決定することができる。
まとめ マンション管理組合の理事役員の辞任に備えて
本記事のまとめ
- マンション管理組合の理事役員は辞任できるのか?
- マンションの理事長が知っておくべき理事役員の辞任後の対応
- マンション管理組合の理事役員の辞任に備えた後任の選任方法の規定
管理組合運営を円滑に行うためには管理規約の内容が重要となります。
ただし、あまりにも理事会や理事長の権限を大きくしてしまうと、管理組合の私物化や都合の良い解釈に繋がりトラブルに発展する可能性があります。
日頃から様々な状況を想定し、管理規約の変更案を十分に検討しておくことで、柔軟性を持った、意志のある管理組合運営を行うことができますので、今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
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