中古マンションを購入しようとするときに重視することはなんでしょうか?
一般的には次のポイントにおいて、購入者のライフステージに合わせて優先順位をつけて購入に至るのではないでしょうか。
購入判断のポイント
- 価格
- 広さ・間取り
- 最寄り駅(エリア)・駅からの距離
- 環境(線路からの騒音・治安等)
- 駐車場の有無etc
一方でマンション購入にあたっては昔から格言のように「マンションは管理を買え」と言われています。
本記事ではこの格言から中古マンションの購入にあたり何に注意すればいいのか具体的なポイントを紹介します。
こんな方におすすめ
- 中古マンションの購入を検討している方
- 自宅マンションの売却を考えている方
- マンションの管理組合活動に関心がある方
1.中古マンションを購入するなら注意したい管理組合活動のポイント
日本の人口は減少傾向にある中で、それでもまだマンションは増え続けています。
しかしながら、新築価格が高騰しすぎることにより、新築マンションに手が届かない人は、良質な中古マンションを求める流れがこれから本格化すると考えます。
「マンションは管理を買え」とは、具体的にどのようなポイントを確認すべきかを認識している人はそう多くありません。
私は「マンションは管理を買え」=「管理組合活動の実績」だと考えます。
本記事で紹介する内容では、美観面という自分ですぐにわかるポイントもあれば、理事会の活動状況という、一見するとどのように調べればよいかわからないポイントもありますが、わからないことは仲介会社の営業マンに遠慮せず確認してください。
なお、営業マン自らが今回ご紹介する注意するポイントを重要視しており、的確に受け答えることができる場合、信頼できる営業マンだと考えていいでしょう。
2.管理組合の美観意識をもとに注意するポイント
今から紹介する注意ポイントはプロも素人もあまり関係なく見抜くことができます。
逆にこれらができていないマンションは、基本的な管理組合活動ができていないマンションとも言えますので要注意です。
美観のチェックリスト
- 清掃
- 植栽
- 掲示板
- 自転車置場
- 郵便受け
2-1 清掃の確認ポイント
明らかに数日に渡り放置されていると考えられる汚れやゴミがないか、蜘蛛の巣が無いかを確認してください。
また、ゴミ置場がきれいに分別されているかどうかで、住民の質もわかります。
2-2 植栽の確認ポイント
植栽が枯れていることにより地面が剥き出しとなっているような場所がないか、生垣等では端が揃っているか、敷地外の道路に植栽がはみ出していないか等を確認してください。
2-3 掲示板の確認ポイント
整然と掲示されているか、掲示物の日付が古くないか、管理組合・自治会といった区分がされているかを確認してください。
また、ゴミ出しのルール、騒音といったマナー系の掲示が多い場合は同じことで悩む可能性が高いため注意が必要です。
2-4 自転車置場の確認ポイント
埃を被った自転車がないか、あったとしても注意文等が貼られて整理する意思が示されているか、自転車シールは貼られているか、幼児用かご付きや電動自転車等、駐輪区分が分かれているかを確認してください。
埃を被った自転車が多い場合、定期的な自転車置場の整理ができていないくて、自転車区画の管理が心配になります。
2-5 郵便受けの確認ポイント
部屋番号等のシールの外観は統一されているか、チラシで溢れた郵便受けが無いか確認してください。
管理組合(管理会社)がしっかりしていれば、チラシで溢れた郵便受けは防犯上も良くないため、所有者や居住者に個別に連絡を取ってそのような状況にならないようにするはずです。
3.中古マンションの購入後に大きな影響を与える資金計画のポイント
中古マンションを購入するときに費用面で言えばマンション価格はとても重要です。
また、価格を検討するときには月額のローン支払い額に加え、管理費+修繕積立金の毎月のランニングコストについても重要視するはずです。
では毎月の管理費と修繕積立金の合計額がいきなり1万円以上も値上がりしたらどうでしょうか?
このような状況にならないための注意ポイントは「長期修繕計画」と「修繕積立金計画」の2つがとても重要です。
3-1 長期修繕計画の注意ポイント
長期修繕計画書とは、快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために、将来30年程度の間に見込まれる修繕工事及び改修工事の内容、おおよその時期、概算の費用等を明確にし、修繕積立金の額の根拠を明確にするために作成されます。
つまり長期修繕計画が存在しないとうことは修繕積立金の根拠が無いのと同じです。
そしてこの長期修繕計画書は一度作成すればそれを将来にわたりずっと使用するものではなく、概ね5年程度を目安に更新をしていくものです。
そのため、定期的に長期修繕計画が更新がされていないということは、消費増税や工事費の増加等の社会の流れやマンション内の工事履歴が適切に反映されていないと考えることができ、マンションの所有者が管理組合活動に無関心であることがわかります。
3-2 資金計画(修繕積立金)の注意ポイント
マンションの管理費や修繕積立金は広さに応じて決まります。
例えば100㎡のマンションに住んでいて㎡単価が100円というのであれば、月々に支払う修繕積立金は10,000円(100㎡×100円)ということです。
多くのマンションでは修繕積立金は、将来増額することを前提に金額設定がされています。
そのため、改定の時期が遅くなればなるほど、将来の改定幅は大きくなりますし、マンションによっては一時金の徴収で乗り切ろうという無謀な計画を立てているマンションもありますので注意が必要です。
管理組合に本問題に関する危機意識がある場合、すでに一定の金額水準に変更されていますので、管理組合活動の結果が如実に表れます。
購入を検討している中古マンションの修繕積立金の水準が㎡単価200円以上あれば当面は問題ないと考えられますが、この水準になると、75㎡の標準的なファミリータイプの部屋でも月額の修繕積立金が15,000円となることから購入をためらう方が多くなります。
皮肉にも良い取り組みをしているマンションが中古市場において評価されていないというジレンマに陥る、修繕積立金が抱える社会的問題を如実に表すこととなり残念です。
4.管理組合運営(理事会運営)の注意ポイント
マンションを購入すれば必ず管理組合に属することになります。
これまで紹介してきたポイントはその管理組合活動の結果によって大きく左右されるものであり、実際にこの活動を行う組織はマンションの所有者から選ばられ理事が行うことになります。
この理事会活動において注意すべきポイントを紹介します。
なお、このポイントは過去の理事会議事録、総会議事録を確認することである程度把握できます。
4-1 管理組合理事長の注意ポイント
同じ人が長く理事長(その他役員含む)を務めている場合、管理組合を私物化しているか、もしくは役員の成り手がいずに、マンション全体が管理組合活動に無関心である可能性があります。
そうなると健全な管理組合運営が行われているとは考えにくいでしょう。
一方で理事長のなり手がいないために仕方なく長期にわたり理事長を務めている人も一部ではいます。
4-2 理事会の開催頻度の注意ポイント
理事会の開催が年に2~3回という場合は、管理組合運営が十分でない可能性が高いです。
そのようなマンションで積極的な管理組合活動が行われてきたとは考えにくく、まだ築年数が浅ければ巻き返しは可能ですが、2~30年経過していると厳しい状況と考えざるをえません。
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4-3 管理組合活動の情報共有の注意ポイント
理事会活動が活発なほど情報共有、開示がなされています。
情報開示の方法は様々ですがわかりやすいところでは、議事録や議事録の代わりに管理組合ニュースを掲示・配付しているといったところです。
また、マンションのホームページを持っていて、定期的に更新がされている管理組合は活動が活発と言えます。
4-4 購入時の重要事項である管理費等の滞納の注意ポイント
管理費等の滞納額は中古マンションの売買時における重要事項説明の項目に含まれています。
滞納額の確認は当然のことながら、滞納者にどのような督促を行っているかという管理組合理事会の滞納に対する姿勢は重要な確認ポイントです。
なお、1件が長期に渡り滞納をしている場合は問題ですが、1~3ケ月程度の滞納者でこれ以上増えない場合は気にしなくて大丈夫です。
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4-5 管理規約の変更実績は注意ポイント
管理組合の憲法と呼ばれる管理規約は時代の流れによって変化しています。
直近では住宅宿泊事業法の成立に伴い、民泊の可否は管理規約で規定すべき状況となり、そのような変化に対応しているかは、管理組合活動における情報収集力、課題意識が如実に表れます。
また、管理規約の変更するためには総会での決議要件が厳しく、総会の出席率(委任状・議決権行使書含む)が高くないと実現できません。
管理規約の変更に敏感な管理組合であることと、所有者が総会に出席すること、この2つの観点が重要になりますので、管理組合活動の意識の高さを判断するためのポイントの一つです。
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5.管理組合収支において収入増、経費削減の実績があるか?
管理組合の財源を確保するためには、「収入増」か「支出減」の二択(もしくは両方)であり、この取り組みを行った実績があるかは、管理組合活動の評価ポイントであり、実際に財源を確保できているかどうかに直結する事案です。
修繕積立金と同様に管理費会計に余裕がなければ、中古マンションの購入後に管理費が大幅値上げという可能性もありえます。
しかし、収入増、支出減に固執するあまり「ケチな管理組合」となってしまうことがあり、こうなると各メンテナンス会社や補修会社等が離れている可能性があります。
また、近年では宅配ボックスはマンションにおいて必要不可欠な設備となっていますので、もし宅配ボックスが無いマンションであればこういった部分には資産価値を上げるために投資をすべきです。
そのため、お金は節約するばかりでなく、積極的に投資をしているかも、管理組合活動の評価ポイントとなります。
5-1 管理組合の収入を増やす取り組み
チェックリスト
- 共用部の賃貸(携帯基地局の設置や店舗としての貸し出し)
- 駐車場の外部貸し
- 自動販売機の設置etc
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5-2 管理組合の支出を減らす取り組み
チェックリスト
- 機械式駐車場の撤去
- 共用部照明のLED化
- 電力自由化に伴う契約先の変更
- 管理仕様(管理員の勤務時間、点検頻度等)の見直し
- 大規模修繕工事の競争入札etc
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5-3 バリューアップ工事の取り組み
チェックリスト
- 宅配ボックスの設置
- 録画機能が付いたインターホン設備への更新
- スロープの設置といったバリアフリー化の対応etc
宅配ボックスの設置、録画機能が付いたインターホン設備の更新、スロープの設置等。
まとめ 中古マンションを購入するなら注意したいポイント
マンションが増え続ける中で、資産価値を維持・向上させるためには、中古市場において選ばれ続けるマンションである必要があります。
そのためには本記事で紹介したような管理組合活動の結果が重要となり、これが「マンションは管理を買え」と言われる所以です。
特に時間が経過すればするほど、管理組合活動の差は表れてくることになります。
マンションを購入する際には駅からの距離や部屋の間取り、リフォームといったポイントだけでなく、「マンションは管理を買え」=「管理組合活動の実績」にも注目して選んでみてください。
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